『家庭に供給されるプロパンガス』と聞くと、『ガスボンベ』を思い浮かべる人が多いですよね。
実は、プロパンガスには、もう1つの供給方法があります。
それが『バルク供給システム』です。
『バルク供給システム』は、ガスボンベでの供給よりおトクな場合もあるんです。
はい、メリットとデメリット両方見ておくことが大切ですよね。
ということでこの記事では、
- バルク供給システムのメリットやデメリット
- ガスボンベでの供給と比べて料金や安全性はどう違うか
についてお伝えします。
ぜひ最後まで読んでくださいね!
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プロパンガスの『バルク供給システム』とは?
まず、『バルク供給システム』についてざっと説明しておきましょう。
『バルク供給システム』とは、ガスボンベではなく、
『バルク貯槽』『バルクタンク』と呼ばれる、大きなタンクにガスを詰めて供給するシステムです。
これが『バルクタンク』です。
この記事での言葉の使い方
家庭用のバルクシステムは『新バルク供給システム』『新バルク』とも呼ばれていますが、この記事では『バルク供給システム』と呼ぶことにします。
また、バルク供給でガスを入れる容器にも『バルク貯槽』『バルクタンク』などいろいろな呼び方がありますが、ここではまとめて『バルクタンク』と書いています。
そして、『シリンダー供給』というのは、ガスボンベで供給する供給方法のことです。
バルク供給システムとシリンダー供給の違いは、
シリンダー供給
⇒ガスボンベにガスを詰めて配送し、ボンベを交換する
バルク供給システム
⇒『バルクローリー』という車でガスを持ってきて、バルクタンクにホースをつないで直接補充する
ということです。
バルク供給システムとシリンダー供給では供給方法も人件費も違います。
そのため、バルク供給には『バルク料金』という特別な料金体系があります。
『バルク供給システム』のメリットとデメリット
では、バルク供給システムのメリットとデメリットをチェックしていきましょう。
バルク供給システムのメリットとは
バルク供給システムのメリットは
- ガスを安定的に供給できる
- 供給コストの削減が期待できる
- ガスの供給が楽になる
- 災害に強い
- バルクタンクのサイズや設置のタイプが選べる
- 美観を損ないにくい
といったことがあります。
メリット1ガスを安定して供給できる
バルク供給システムでは、一度に大量のプロパンガスを貯蔵しておくことができます。
タンクも100kg、300kg、500kg、1,000kgなどと、容量のバリエーションはいろいろ。
使用量に合わせてタンクの大きさを選べますし、ガスが足りなくなる心配もありません。
メリット2配送コストの削減が期待できる
バルク供給システムは、バルクローリーから直接ガスを充てんする方法で、ガスを配送しています。
そのため
- ガスボンベの交換や運搬、回収にかかる人件費が減らせる
- ガスボンベにガスを充てんする作業の回数が減り、ガスの配送の回数も少なくて済む
- ひいては、流通手段が効率化できる
ということで、ガスの配送にかかるコストが減らせるのです。
バルク供給システムの料金は、だいたいにおいて
基本料金
⇒シリンダー料金より高い
従量単価
⇒シリンダー料金より高い
となっています。
料金については、のちほど詳しくお伝えします。
メリット3ガスの供給が楽
バルク供給システムの供給方法には、
配送する人
⇒重いガスボンベを運ぶ必要がなく、供給作業が楽
ガスを利用する人
⇒シリンダー供給よりも騒音や振動が少ない
というメリットがあります。
ガスボンベの場合は、
- ガスボンベの設置場所までボンベを運ぶ
- ガスボンベを交換する
- 外したガスボンベをトラックまで運ぶ
という作業が必要です。
途中に階段があったり通路が狭かったりすると、大変ですよね。
でもバルク供給システムなら、
バルクローリーからバルクタンクまでホースを引っ張っていって、直接ガスを補充すればOKです。
階段があったり通路が狭かったりしても供給しやすく、音や振動も少なくて済みます。
メリット4バルクタンクが固定されているので、災害に強い
LPガスは災害に強いエネルギーですが、バルクタンクはさらに災害に強いです。
タンクが地面にしっかり固定されていたり、地下に埋め込まれていたりするので、ガスボンベより揺れの影響を受けにくいのです。
また、『災害対応バルクシステム』という、災害時にもガス供給ができるシステムもあります。
- バルクタンク
- ガスメーターやホース、圧力調整器などの供給設備
- 発電機や煮炊き釜、コンロなどの消費設備
を組み合わせたシステムで、災害時でも迅速にエネルギー供給ができるシステムです。
そのため、
- 避難所になる学校や公民館などの公共施設
- 病院
- 福祉施設
といった場所で設置されていることも、よくあります。
個人の家庭でも、この『災害対応バルク』を使っている人もいるんですよ。
メリット5バルクタンクのサイズや設置の仕方が選べる
バルクタンクは、サイズのバリエーションが豊富ですし、縦型、横型から選べます。
さらに、設置の仕方も、
- 地上に設置する
- 地下に埋設する
と、2通りあります。
(地下に埋設できるかどうかは、設置場所の状況にもよります。)
地下に埋設してしまえば、敷地がすっきりしますし、そのスペースを使うこともできますね。
メリット6美観を損ないにくい
バルク供給システムには、
- バルクタンクが、すっきりした見た目である
- バルクタンクを地下に埋設することもできる
ということから、『美観を損ないにくい』というメリットもあります。
特に、地下埋設ならタンクが目に入りにくくなります。
庭の景観を大切にしたい人にとっては大きなメリットがありそうですね。
バルク供給システムのデメリットとは
次に、バルク供給システムのデメリットを見ていきましょう。
- 導入の費用が高い
- 検査の費用がかかる
- バルクタンクを置く場所が必要
- 撤去するためにも費用がかかる
- ガス会社を変えにくくなる
- バルク供給をしているガス会社としか契約できない
といったことが挙げられます。
デメリット1バルクタンクの設備費用がかかる
シリンダー供給は配管とガスボンベを設置すれば使えるので、導入や設備のコストが安く済みます。
一方、バルクシステムの場合は、
大きなタンクを安定した場所に設置する必要があり、工事を伴うため、手間も費用もかかります。
さらに、地下型のバルクタンクにするとなれば、工事も大掛かりになり、費用も増えてしまいます。
設置費用は、
『設備はガス会社からの無償貸与という形にして、実際にはガス料金に乗せて設備費を支払う』
というやり方もあります。
ただ、その場合
- ガス代に上乗せされる設備費分が高くなる
- ガス会社の契約期間が長くなる
という可能性が高いです。
デメリット2検査にも費用が掛かる
バルクタンクは、設置してから20年がたつと、その後は定期的な検査が必要です。
この検査に、けっこうな費用がかかるのです。
というのも、バルクタンクの検査では検査そのもの費用のほかに
- バルク貯槽を取り外す・取り付けるための費用
- バルク貯槽に付いている機器を取り外す・取り付けるための費用
- 検査場まで運搬する・検査が終わってから元のところまで運搬する費用
というふうに、検査をするために必要な工程や運送の費用がかかるからです。
具体的な額は、設置場所の状況や必要な工程にもよるので一概には言えませんが、
『1,000㎏のタンクで、400~500万円という見積もりが出た』という話もあります。
家庭用ならタンクが小さいですから、そこまでの額にはならないでしょう。
デメリット3バルクタンクを置く場所が必要
バルク供給システムを利用するには、屋外にバルクタンクを置くスペースが必要です。
バルクタンクはガスボンベよりも大きいので、当然、必要なスペースも大きくなります。
例として、富士工器株式会社製の100kgのバルクタンク(横型)は、どのくらいの大きさかというと
横幅135.5㎝ × 奥行き40㎝ × 高さ78㎝
これはバルクタンクそのもののサイズです。
置き場所の状況によっては、バルクタンクより少し広めに、コンクリートの土台などが必要になる場合もあります。
デメリット4バルクタンクを撤去するのにも費用が掛かる
バルク供給システムをやめるときには、バルクタンクの撤去にも費用がかかります。
ということは、
『一旦バルク供給システムにしたら、やめにくい』
ということでもありますね。
デメリット5ガス会社を変更しにくくなる
バルクシステムにすると、
ガス会社の変更がしにくくなります。
なぜかというと、バルクタンクは、ガス会社の所有になることが多いからです。
バルクタンクがガス会社の所有となれば、
- ガス会社を変えるには、バルクタンクも変える必要がある
- バルクタンクを変えるには、これまでのタンクを撤去しなければならない
- 撤去したタンクは運搬や処分が必要で、そのためにも費用がかかる
ということでもあります。
また、バルクタンクを無償貸与で利用した場合、ガス会社との契約期間が長くなる可能性があります。
こうなると、ガス会社の変更はしにくいですね。
デメリット6契約できるガス会社が限られる可能性がある
バルク供給システムは、
ガスを補給するためのバルクローリーを持っているガス会社でないと、対応できません。
どのガス会社でもバルク供給を頼めるわけではないのです。
とくに、小さなガス会社や小売店では、バルクローリーがないことも多いので、
『これまでのガス会社のまま、バルク供給システムにしたい!』と思っても、できないこともあります。
また、地域によっては、ガス会社の選択肢も少なくなることがあります。
バルク供給システムとシリンダー供給を比較
どんなにメリットが多いガスの供給方法だとしても、料金が高かったり安全性が確実でなかったりしたら、利用できないですよね。
ここからは、シリンダー供給とバルク供給の
- 料金
- 安全性
を比べてみましょう。
バルク供給システムの料金はどう?
先にも触れましたが、バルク供給システムの料金は、
『バルク料金』という、通常とは違う料金設定がされています。
どのくらい違うか、例としてサンリン株式会社の長野県の料金を見てみましょう。
バルク料金 | シリンダー料金 | ||
基本料金 | 2,750円 | 1,650円 | |
従量単価 | 0.1~10立方メートル | 554円 | 710円 |
10.1~20立方メートル | 659円 | ||
20.1~50立方メートル | 490円 | 637円 | |
50.1~70立方メートル | 616円 | ||
70.1立方メートル以上 | 426.4円 |
引用サンリン株式会社 バルク料金表・シリンダー料金表より(2022年6月検針分より適用の税込み料金)
ガス代で比べると、以下のようになります。
使用量 | バルク料金 | シリンダー料金 |
5立方メートル | 5,520円 | 5,200円 |
10立方メートル | 8,290円 | 8,750円 |
20立方メートル | 13,830円 | 15,340円 |
30立方メートル | 18,730円 | 21,710円 |
40立方メートル | 23,630円 | 28,080円 |
60立方メートル | 33,430円 | 40,610円 |
引用サンリン株式会社 バルク料金表・シリンダー料金表より(2022年6月検針分より適用の税込み料金)
この料金設定で比較すると、ガス料金そのものは
10立方メートル近くなると、バルク供給のほうが安くなる
という計算になりますね。
ただし、
- バルク供給をするには、初期費用がかなりかかる
- 初期費用をガス料金に上乗せして払う形にした場合、ガス料金はこの表よりも高くなる
ということから、料金表での比較だけで考えて導入するのはやめたほうが良いです。
ポイント
基本料と従量料金、ガス料金の計算方法は、供給先の状況やガス会社によって違います。
バルク供給システムを検討する時は、
- 候補のガス会社の料金表と計算方法
- 実際のガスの使用量
を使って計算してみてくださいね。
バルク供給システムとシリンダー供給どっちが安全?
大丈夫です!
バルク供給もシリンダー供給も、安全性はしっかり確保されています。
バルクタンクにもガスボンベにも、それぞれに対応した
- 安全弁
- ガス漏れ警報装置
- 地震感知器
- 集中監視システム
といった安全装置が付いていて、安全を守っています。
また、
- ガスの充てんやガスボンベの交換は専門知識のある有資格者が行う
- バルクローリーにいたずら防止装置などを付ける
といった安全対策もされています。
バルク供給もシリンダー供給も安心して利用できますよ。
バルク供給システムはどんな場合におすすめ?
ここまで見てきたように、バルク供給システムには、メリットもデメリットもあります。
大前提として、
一般的な人数の家庭で一般的なガスの使い方をするなら、シリンダー供給がおすすめです。
バルク供給がおすすめなのは、
- 家族が多い、エネファームを使っているなど、ガスの使用量が多い
- 導入にコストがかかってもバルクにするだけのメリットがある
- 庭にバルクタンクを置くスペースを確保できる
という場合です。
逆に
- 家庭の人数がとりたてて多いわけではない
- ガスの使用量は標準的な範囲
- 安いガス会社があったら乗り換えたい
ということであれば、シリンダー供給のほうがメリットが大きいです。
バルク供給を検討するときは
バルク供給システムの導入を検討するときには
まず、バルク供給に対応しているガス会社を見つけましょう。
そのうえで、
- バルク供給にしてコスパが見合うだけのガスの消費量があるかどうか
- バルク供給システムのどんなメリットを重視するか
- バルクタンクの設置やそのための工事にかかる費用
- バルクタンクを設置するのに必要なスペースや設置場所
- 設備を無償貸与にする場合、ガス代にどのくらいの設備費が上乗せされるか
- 設備を無償貸与にする場合の契約期間や、途中で解約する場合の違約金などの有無
- バルクタンクの検査や廃棄にかかる費用
- 総合して、自分にとってコスパが見合っているかどうか
といったことを、ガス会社とよく相談して検討してくださいね。
ガス会社を探すことから始める場合は、『ガス会社変更サービス』で相談してみることをおすすめします。
良心的なガス会社を紹介してくれるので、安心ですよ!
関連記事:【2022最新】ガス料金を節約するプロパンガス会社変更サービス比較
まとめ
『バルク供給システム』は、
- 設備費がかかる
- タンクを置く場所が必要
- ガス会社を変更しにくくなる
などといったデメリットがあるものの、
- ガスを安定的に供給できる
- 供給のコストが減らせる
- 普通のプロパンガス以上に災害に強い
といったメリットがある供給方法です。
料金は
基本料金
⇒シリンダー料金より高い
従量単価
⇒シリンダー料金より安い
という設定になっていることが多く、日常的にたくさんガスを使う人にはおトクです。
ただし、標準的な人数の家族で、ガスの使用量も標準的な範囲なら、シリンダー供給のほうが良いです。
バルク供給システムを導入するときには、ガス会社ともよく相談し、
- 自分のライフスタイルなどからコストが見合うかどうか
- 必要な費用や手間、デメリットなどを超えてメリットが得られそうか
といったことを丁寧に考えて検討してくださいね。