私たちが払うプロパンガスの料金には、実はいろいろな『価格』が含まれています。
その1つが『CP価格』。
普段はあまり聞かない言葉ですが、
プロパンガス料金にとても深くかかわっている価格で、『ガスの従量単価は、CP価格に左右される』と言っても過言ではありません。
はい、私も調べてみました!
ということで、今回は
- 『CP価格』とは何か
- 『CP価格』はプロパンガスの従量単価にどう関わるのか
について解説します。
ぜひ読んでくださいね!
スポンサーリンク
プロパンガスの『CP価格』って何?
プロパンガスの『CP価格』とは
『CP価格』とは、
サウジアラビアの国営石油会社『サウジアラムコ社』が、輸入国と取引する時に取引先に通告する、プロパンガスの価格のことです。
『CP』は『Contract Price(契約価格)』の略です。
日本もサウジアラビアからガスを輸入する時には、サウジアラムコ社から通告された価格でガスを買っています。
CP価格はだれが決める?
CP価格は、サウジアラムコ社が
- 原油の価格の動向
- シエルガスなどの動向
- サウジアラビアや他の国の入札価格の動き
などから総合的に判断して決めています。
いいえ、『取引』と言っても
『サウジアラムコ社が価格を決めて、取引国に対して通告する』というのが通例です。
CP価格は取引相手と交渉して決めているわけではないのです。
CP価格が変動する要因
CP価格は、
- プロパンガスの需要
- 世界の経済や政治の情勢
によって変動します。
たとえば、冬にはプロパンガスの需要が増え、温かくなると減りますよね。
その需要の変化を受けて、例年春から夏にかけて、CP価格は下がっていきます。
また、世界情勢を受けての変動としては、
2008年9月のリーマンショック
⇒石油の需要が落ち込み、原油の先物市場からの投資マネーも引き上げられたため原油価格が下落、CP価格も下がった
2010年末、中東や北アフリカで起きた民主化運動『アラブの春』
⇒情勢の不安定化によって原油価格が上昇
2022年2月からの、ロシアによるウクライナ侵攻
⇒ロシアが原油の生産地であることに加え、諸国の情勢の不安定化で原油価格が急上昇
といった例があります。
このように、経済の動きだけでなく、政治や民主化運動など、世界で起こるいろいろな出来事がCP価格に関わっているのです。
『MB価格』もガス料金に影響する
CP価格と似たような価格に、『MB価格』があります。
『MB』はMont Bellevue(モントベルビュー)のことで、
『MB価格』は、アメリカテキサス州モントベルビュー市のプロパンガス基地での取引価格です。
アメリカで生産されたプロパンガス原料は、モントベルビューに集められて精製され、プロパンガスになります。
そのため、モントベルビューでの価格も影響力が強く、
MB価格はプロパンガスの価格の世界三大指標の1つ
になっています。
2017年以前は、日本国内のプロパンガスの料金は、CP価格に100%連動していました。
でも、2017年からガス会社によってはMB価格もガス料金に影響しています。
その他のプロパンガス料金に関わる用語
プロパンガス料金に関わる言葉には、『CP価格』『MB価格』のほかにも
FOB価格(Free on Board)
⇒『本船引き渡し条件』の略で、タンカー運賃などを除いた積み出し価格
フレート(Freight)
⇒運送をする業者がもらう運賃
CFR(Cost and Freight)
⇒FOB価格にフレートを加えた価格で、元売り業者が日本での指標価格としている
といった言葉があります。
これらの言葉も普段はなかなか聞かない言葉ですね。
でも、どれも料金に深くかかわっているんですよ。
CP価格とプロパンガス料金の関係は?
CP価格から私たちのプロパンガス料金が決まるまで
CP価格から、私たちが払う料金がどのように決まるかというと、
- CP価格が日本に輸入されるプロパンガスの、入着価格(CIF価格)の要素になる
- CIF価格に、輸入元が卸売業者に売るまでに必要な費用が足される
- 卸売業者が小売業者に販売するまでのコストが加算される
- 小売業者が消費者にガスを売る時のコストが加算される
というプロセスを経て決まります。
図にすると、このようになります。
次に、CIF価格や国内での流通にかかるコストなどについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
『CIF価格』について
『CIF価格』とは、『ガスが日本に到着するまでの価格』のこと。
『Cost, Insurance and Freight(運賃と保険料込み)』の略です。
その名の通り、
価格(Cost)
⇒CP価格を含むコスト
保険料(Insurance)
⇒プロパンガスを輸送する船会社に何か起こった時の保険
運賃(Freight)
⇒原産国から日本までの積み込み費用や船賃
から、このCIF価格が決まります。
CIF価格にはCP価格が含まれているので、CP価格の変動に伴ってCIF価格も変動します。
CIF価格から消費者の払うガス料金が決まるまで
プロパンガスは、日本に到着した後もいくつかの業者を経て私たちのところに届きます。
その間にも、
輸入した業者が卸売り業者に売るまでの費用
⇒内航運賃、管理費、設備費、保安費用、石油ガス税など
卸売り業者から小売業者に売るまでの費用
⇒充填所の費用、人件費、配送費、管理費など
小売業者から消費者に売るまでの費用
⇒配送や集金、検針にかかる人件費、配送の燃料費、減価償却費、保安費用など
といった費用がかかります。
この費用が加えられ、私たちが払うガス料金が決まるのです。
プロパンガスの料金は『原料調整制度』で決まることが多い
プロパンガスの料金を決める方法の1つに、『原料費調整制度』という方法があります。
この制度についても、チェックしておきましょう。
『原料調整制度』とは?
『原料費調整制度』とは、『その時その時の原材料費を価格に反映させる』という料金の決め方です。
たとえば、有名なアイス『ガリガリ君』は、2016年に、25年ぶりに値上げしました。
アイスを値上げしない間にも原材料費は値上がりしていたはずですよね。
でも、長い間企業努力で値上げしないようにしていたわけです。
ガリガリ君が長年値上げせずがんばっていたのとは逆に、
原材料費が上がる
⇒料金が上がる
原材料費が下がる
⇒料金が下がる
というふうに、原材料費の動向が反映されるのが『原料調整制度』です。
プロパンガスの料金はこまめに変動する
プロパンガスの原料費は、
- 輸入価格(CP価格やMB価格)
- 為替レートの変動
によって、毎月変わります。
その毎月変わる原料費を、
プロパンガス原料の貿易統計価格の3か月間の平均に基づいて、2か月後にガス料金に反映しています。
そのため、プロパンガスの料金はこまめに変動するのです。
メモ
『3か月の平均を、2か月後にガス料金に反映する』というのは
- 4月、5月、6月の原料価格の平均を取る
- 7月、8月の間(2か月間)経過させる
- 9月に、4~6月の平均を反映させる
というやり方です。
原料費調整制度のメリットは?
原料費調整制度を使うメリットは、
- 原料費が下がった時も価格に反映され、価格も下がる
- 企業努力が及ばない部分での価格の変動を、公平に料金に反映することができる
- 効率化など、企業のの努力も透明化できる
- 原材料費が大幅に高騰しても価格の高騰はある程度抑制されるので、消費者が払う料金がいきなり大幅に上がることを防げる
ということです。
つまり、原料費調整制度は
- 企業は努力をしたうえで、努力が及ばない部分は価格に反映できる
- 消費者は突然の高騰から守られる
という、双方にメリットがある制度なのです。
これがプロパンガスの『原料費調整制度』です。
なお、大手のガス会社では、サイトに原料調整額を公表していることもあります。
ぜひ一度、見てみてくださいね。
原料調整額をチェックしておくと、不審な値上げがあった時に気付きやすくなりますよ。
スポンサーリンク
まとめ
日本では、プロパンガスの多くをサウジアラビアなどの中東からの輸入に頼っています。
プロパンガスを輸入する取引で、サウジアラビアの国営ガス会社から通告される価格が『CP価格』です。
この『CP価格』に、
- 為替レート
- ガス会社によっては『MB価格』
- 日本までの輸送費や管理費
- プロパンガスが日本に到着してから家庭などに供給されるまでの管理費や輸送費、充填費用など
- プロパンガス会社の検針、点検、保安などの費用や人件費、減価償却費など
が加えられて、私たちが払うガス料金が決められます。
また、プロパンガスの料金は原材料費の変動の影響を受けます。
原材料費は需要の増減や産出量だけでなく、世界経済や政治の情勢などによっても変動するので、
- 経済界にとって大きな出来事
- 戦争や紛争など
によっても、プロパンガス料金が影響されるのです。
私たちにとって身近なプロパンガス料金も、世界としっかりつながっているんですね。