掃除にアク抜きに料理にと、大活躍の『重曹』。
筆者も日頃から何気なく使っていますが、
『重曹はどうやって作っているか』
って、あまり考えたことなかったです。
それに、どんないきさつで、いつ頃から使われるようになったのかも。
…と気がつくと調べたくなる性格なので、さっそく調べてみました!
昔は今のような化学工場もありませんでしたから、作っていたのでは?と思いますよね。
でも、実際はどうなのでしょう?
ということで、この記事では
- 重曹の作り方
- 重曹は自作できるのかどうか
- 重曹の歴史
について解説します。
ぜひ読んでくださいね!
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重曹の作り方は?
重曹の作り方は、大きく分けて2通り、
- 海水や岩塩の塩分を水に溶かして材料にする
- 重曹を含んだ鉱石や岩石を採掘して使う
という方法があります。
海水や岩塩から作る方法
海水や岩塩から重曹を作る方法は、
- 海水から取り出した塩や岩塩を水に溶かす
- 電気分解して、『苛性ソーダ』を抽出する
- 苛性ソーダに炭酸ガスを加える
- 重曹が結晶化するので、精製して結晶を取り出す
という工程です。
つまり、『塩水から重曹を作ることができる』ということなのです。
鉱石や岩石から作る方法
重曹は、
- 重炭酸ソーダ石
- トロナ鉱石
と呼ばれる鉱物を使って作ることもあります。
重炭酸ソーダ石やトロナ鉱石は、『天然の重曹』とも言われています。
たとえば、モンゴルのシリコンゴル高原には、大きなトロナ鉱石の鉱床があります。
鉱石を使って重曹を作るときは、
- 鉱石を採掘し、精製する
- 炭酸ガスを加える
- 重曹が結晶化するので、それを精製して取り出す
または、
- 重曹成分を含んだ鉱石を精製する
- 水に溶かす
- 炭酸ガスを加える
- 結晶化した重曹を精製して取り出す
という工程です。
塩から作るときと鉱石から作るときの違い
海や岩塩の塩から重曹を作る作り方と、鉱石を使う作り方での違いは、
塩から作る
⇒電気分解が必要
鉱石から作る
⇒電気分解の工程がない
ということです。
でも、どちらもできあがるのは、同じ『重曹』ですし、化学式も『NaHCO3』で同じです。
重曹を作る過程の安全性は?
重曹が出来るまでの間には、いろいろな化学反応があります。
『化学反応を経て作られる』となると、作るときの安全性が気になる人もいるでしょうが、
工場では当然、安全に重曹を作れる設備を整えて生産しています。
特に食用や医療用の重曹については、
食用の重曹
⇒食品衛生法に基づいて製造・管理されている
医療用の重曹
⇒医療品医療機器等法(薬機法)に基づいて製造・管理されている
など、安全管理も徹底しています。
なので、工場の安全性についても製品の安全性についても、心配はいりません。
関連記事:掃除用の重曹を食べてしまったけど大丈夫?食用との違いをチェック!
重曹は自作できる?昔の人は作ってた?
残念ながら、重曹を自作するのは、一般家庭ではまず無理です。
先ほど紹介した、それぞれの工程だけ見ると、そんなに難しそうには見えないかもしれません。
でも、重曹を作るときには
- 原料の液体の中にほんの微量含まれる不純物を取り除く
- 重曹の結晶が入った液体から結晶だけを取り出す
といった工程も必要で、これが複雑なのです。
なので、電気分解できたとしても、掃除や食用に使えるレベルの重曹を自作するのは、かなり難しいです。
いえいえ、『昔は何でも自分で作っていた』とは限らないんですよ。
『電気分解』という技術が発見されたのは1800年のことですし、当時の一般の人が電気分解に必要な道具を手に入れられたとも思えません。
昔の話が出たところで、次に重曹の歴史を見ていきましょう。
重曹の歴史
『重曹』の発見から使われるようになるまで
『重曹』の始まりは、18世紀。
ヨーロッパからアメリカに移住してきた人が、
灰に含まれる『炭酸カリウム』という成分でパンを膨らませることができる
ということを発見したことがきっかけでした。
この『炭酸カリウム』がいろいろな改良を重ねられ、19世紀になって『重曹(炭酸水素ナトリウム)』として使われるようになりました。
その後アメリカでは、料理だけでなく掃除などにも重曹が使われるようになったのです。
メモ
イースト菌を使って膨らませるパンは、紀元前1300年頃からあったとのこと。
重曹は、イースト菌に比べると、かなり新しいんですね。
日本で使われ始めたのはいつ?
重曹が日本に渡って来たのは明治に入ってからです。
それまでは重曹は、
- 『重曹泉』という、自然に炭酸水素ナトリウムを含んでいるお湯を湯治に利用する
- 重曹泉の水でこねた生地でまんじゅうを作る
といった形で使われていたとのこと。
重曹が日本に入って来ると、使い道がとても広い!ということで、
- 山菜のアク抜き
- お菓子の膨らし粉として
- 掃除
など、いろいろな用途に使われるようになりました。
戦争中に食料が不足した時も、まんじゅうのようなものをふくらますために重曹が使われていました。
少ない食料を膨らまして、かさましして食べる目的もあったようです。
一旦は衰退するも見直された重曹
その後、重曹はあまり使われなくなっていきます。
膨らし粉には『ベーキングパウダー』、掃除には洗浄力の高い合成洗剤が普及していったからです。
でも、環境汚染問題や合成洗剤の安全性が注目されるようになると、
環境への影響や安全性を考えて、掃除に重曹や酢などを使う人が少しずつ増えてきました。
そして2011年、NHKで放送された『ナチュラル重曹生活』という番組をきっかけに、重曹は大きく注目され、多くの人に使われるようになります。
重曹を売り出すメーカーや取扱店も、ぐんと増えたのです。
ここ数年は、『SDGs』でさらに環境への関心が高まっています。
今後も、重曹はおおいに利用されていくことでしょう。
メモ
環境への負荷については、
実際は『天然素材=環境負荷が少ない』『合成洗剤=環境負荷が大きい』とは言い切れません。
- 合成洗剤は使用量が少なくて済むため、天然素材の石けんより環境負荷が少ない
- 天然素材の洗剤の原料を採るために、その地域の自然環境が悪化してしまう
ということもあります。
環境問題はとても複雑ですね。
不安の多い時代と重曹
『環境を考えて使う物を選ぶ』ことは、とても良いことです。
ですが、ここ数年ちょっと心配な重曹の話を時々見かけます。
たとえば、
- 重曹水を飲むと酸化した体を中和できるので健康に良い
- 重曹水を飲むと化学物質をデトックスできる
と言って重曹水を飲んだり、人に勧めたりする人がいます。
でもこれは、科学的な根拠はありません。
さらに、
- 『重曹であらゆる病気を治せる』『新型コロナウイルス対策ができる』といった、科学的根拠のない医療情報
- 『重曹水を飲むことで運気が上がり、幸せを呼び寄せられる』など、スピリチュアル系の思想と絡めた話
などもあります。
健康や生活に対する不安の多い時代には、こういった話も出回りやすいのかもしれませんね。
なぜこういった話が出てきたかは不明ですが、『重曹は良い』という話から、重曹の性質に対して拡大解釈や過信などが生まれたのかもしれません。
でも、重曹水を飲みすぎると健康を害することもあります。
『1つのもので簡単に健康や幸せを手に入れられることはない』ということを忘れず、病気のことは医師に相談しましょう。
関連記事:掃除用の重曹を食べてしまったけど大丈夫?食用との違いをチェック!
重曹と上手に付き合っていくためには
19世紀から長きにわたって私たちの生活を助けてくれている重曹。
安全性が高いからこそ、多くの人に使われてきたのでしょう。
重曹と安全に付き合っていくには、
『安全性や性能を過信せず、重曹の性質をきちんと理解し、必要な注意点を守って使う』
ということが大切です。
具体的には
- 長時間掃除をするときや肌の弱い人は、手袋をして扱う
- 重曹を使うと変色や変質を起こしかねない素材には使わない
- 重曹で煮沸するときは、水の状態で重曹を入れてから加熱する
- アルカリ性の物と混ぜてはいけない洗剤とは混ぜない・一緒に使わない
- 食品には食用の重曹を使う
- 食用や掃除用の重曹を薬代わりにしない
- 重曹水を飲むときは、重曹の摂取量(1日3g未満まで)を守り、飲みすぎないようにする
- 腎臓や循環器などの病気がある人は、重曹水を飲みたいときはまず医師に相談する
といったことです。
こういった注意を守れば、重曹は日々の生活の役に立ってくれます。
ぜひ上手に活用してくださいね。
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まとめ
重曹の作り方は、海水や岩塩を使う場合は、
- 海水や岩塩の塩を水に溶かし、電気分解する
- 抽出した苛性ソーダに炭酸を加える
- 重曹の結晶を取り出す
鉱石や岩石から作るときは、
- 鉱石を精製する
- 炭酸ガスを加える
- 結晶化した重曹を取り出す
という方法で作られます。
この手順は単純化していて、実際に精製したり結晶を取り出したりするには、複雑な工程があります。
なので、一般家庭で重曹を手作りすることは、まずできません。
重曹は、19世紀のアメリカで人々の間に広がり、日本にもわたってきました。
近年は
- 環境問題への関心が高まっている
- 重曹は環境負荷の少ない素材である
ということから、多くの人が重曹を使っています。
ただ、重曹の性質や能力に対する過信は禁物です。
あくまでも『炭酸水素ナトリウム』という化学物質であることを忘れず、性質を理解して安全に使える使い方をしてくださいね。