パウンドケーキやどらやきなど、
『生地を膨らませて作る料理』には、『ふくらし粉』が欠かせません。
ふくらし粉としてよく使われるのは、
- 重曹
- ベーキングパウダー
ですよね。
いえいえ、『膨らませる粉』でもこんなに違うのかと思うくらい違いがあるんですよ!
ということで今回は
- 重曹とベーキングパウダーの違い
- 重曹とベーキングパウダーを互いに代用することはできるのかどうか
について解説していきます。
ぜひ読んで、重曹とベーキングパウダーを上手に使い分けてくださいね!
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重曹とベーキングパウダーって何が違うの?
重曹とベーキングパウダー、こんなに違う!
まず、重曹とベーキングパウダーの違いを、ざっと表で見てみましょう。
重曹 | ベーキングパウダー | |
成分 | 炭酸水素ナトリウム | 炭酸水素ナトリウムの他に
としていろいろな成分が入っている |
見た目 | 砂糖のようなさらさらした顆粒状 | 薄力粉のような細かい粉状 |
焼き上がり | 焼き色が黄色っぽくなる・濃くなる | 生地が焼けた色そのまま |
食感 | もちもち系 | ふんわり系 |
味への影響 | 独特の苦みや塩味が出やすい | 素材の味がそのまま出る |
どんなお菓子に使うことが多いか | 和菓子 | 洋菓子 |
膨らみ方の違い | 熱や酸性の成分に反応して、横方向に膨らむ | 水分と熱に反応して、縦方向に膨らむ |
焼くタイミング | 寝かせてから焼くことができるが、酸性の食材が入っている場合はすぐに焼く | 食材の水分で膨らみ始めるので、寝かせずにすぐ焼く |
膨らませる以外の料理での使い道 |
など | てんぷら粉に混ぜると衣がサクサクになる |
料理以外での使い道 | 掃除や洗濯、消臭などいろいろな使い道がある | 料理以外には使えない |
これらの違いについて、さらに詳しく見ていきましょう!
成分の違い
重曹の成分は、『炭酸水素ナトリウム』だけです。
一方、ベーキングパウダーは
- 炭酸水素ナトリウム 26%
- リン酸二水素ナトリウム 17.4%
- リン酸二水素カルシウム 12.4%
- グルコノデルタラクトン 6.6%
- L-酒石酸水素カリウム 6%
- リン酸一水素カルシウム 1.6%
- 食品素材(でん粉) 30%
※日清のベーキングパウダーの場合で、製品によって成分や割合は違う可能性があります。
となっています。
|
ベーキングパウダーに含まれているのは、
ガス発生剤(炭酸水素ナトリウム=重曹)
⇒炭酸ガスを出して生地を膨らます
酸性剤
⇒生地がアルカリ性になるのを防ぎ、ガスが出るのをサポートする
遮断剤
⇒ガス発生剤と酸性剤が反応してしまうのを防ぐ
といった役割を持つ成分です。
つまり、
ベーキングパウダーは重曹にいろいろな成分を加え、生地を膨らませる効果を高め、かつ使いやすくしたアイテム
ということなのです。
見た目の違い
重曹もベーキングパウダーも、『白い粉末』です。
ただ、よく見ると
重曹
⇒サラサラした砂糖のような粉
ベーキングパウダー
⇒薄力粉のような細かい粉
という違いがあります。
焼き上がりや食感、味などの違い
重曹とベーキングパウダーでは、焼き上がりの見た目や食感、味にも違いが出ます。
重曹は、
焼き上がり
⇒黄色っぽくなったり、焼き色が濃くなったりしやすい
食感
⇒もちもちとした食感になる
風味
⇒独特のほろ苦さと塩気、香りがある
重曹を使うと色が変わるのは、小麦粉に含まれる『フラボノイド』という成分がアルカリ性に反応するからです。
独特の絶妙なほろ苦さも、重曹がアルカリ性であるために出るものなんですよ。
ベーキングパウダーは
焼き上がり
⇒焼き色に影響しない
食感
⇒ふんわりした食感になる
風味
⇒生地に入れた素材の風味に影響しないので、素材の味を生かせる
という特徴があるので、ベーキングパウダーを使ったお菓子は素材の色や味をそのまま楽しめます。
ベーキングパウダーにも重曹は含まれていますよね。
なのに味や色が変わらないのは、酸性剤が重曹のアルカリ性を抑えるからです。
重曹とベーキングパウダーは、できあがりの色や風味の違いから、
重曹
⇒和菓子に使う
ベーキングパウダー
⇒洋菓子に使う
という風に使い分けることが多いです。
(あえて洋菓子に重曹を使ったり、両方使ったりすることもあります。)
膨らみ方や焼くタイミングの違い
膨らみ方は、それぞれ
重曹
⇒熱や酸性に反応し、横方向に膨らむ
ベーキングパウダー
⇒水分と熱に反応し、縦方向に膨らむ
という特徴があります。
この特徴の違いから、焼くタイミングにも違いが出てきます。
重曹は、生地に含まれる水分だけでは膨らみません。
なので、じっくり寝かせてから焼き上げることができます。
メモ
ただし、レモンの果汁など酸性の食材を入れた場合は、すぐ焼き始めなければなりません。
酸性の食材が入ると重曹が反応して、すぐにガスが出始めるからです。
一方ベーキングパウダーは、生地に水分が加わるとすぐに反応が始まり、膨らみ始めます。
そのため、生地を混ぜたら、寝かせずになるべく早く焼く必要があります。
使用量の違い
『生地菓子を膨らませる』
という同じ目的で使うときも、重曹とベーキングパウダーでは必要な量が違います。
目安としては、
重曹
⇒生地の粉に対して1~1.5%
ベーキングパウダー
⇒生地の粉に対して2~2.5%
18cmのパウンド型で作るパウンドケーキなら
重曹
⇒約3g
ベーキングパウダー
⇒約5g
つまりベーキングパウダーは、重曹のだいたい1.5~2倍前後の量が必要になるということです。
なお、作る料理やレシピによっても違うので、実際に入れる時はレシピに従ってください。
メモ
重曹とベーキングパウダーは、同じ『小さじ1杯』でもグラム数が違います。
だいたいの目安として
重曹
⇒約5.5g
ベーキングパウダー
⇒約4g
と考えておいてください。
料理に使うときの使い道の違い
ベーキングパウダーは、『生地を膨らませる』という目的で使われます。
てんぷら粉に混ぜてサックリさせることもありますが、それも膨らむ効果を利用してのことです。
一方で重曹は、生地を膨らませる他にも
- たけのこやわらび、ぜんまいなどのアク抜き
- 栗の渋皮煮を作るときの下処理
- 豆の皮が破けるのを防ぎながら、柔らかく煮る
- 肉を柔らかくする
- 緑色の野菜を茹でるときに加えて、きれいな緑色に茹で上げる
- パスタを茹でる時に加えてラーメン風の麺にする
- 炭酸水を作る
- 柑橘類のワックスを取り除く
といった使い道があります。
重曹は成分がシンプルですが、使い道はかなり豊富ですね。
関連記事:ふきのあく抜きを重曹でやる手順解説!正しい下ごしらえ処理とは?
関連記事:たけのこのアク抜きのやり方解説!重曹とぬかはどっちがおすすめ?
料理以外の使い道の違い
重曹は、料理以外の場面でも、かなり多種多様な使い方ができます。
- キッチンの換気扇やコンロなどの掃除
- 鍋の焦げ落とし
- 茶渋落とし
- 研磨作用を利用して、クレンザー代わりに使う
- 洗濯をする時に加えて、柔軟剤替わりや消臭に使う
- 浴槽の椅子や洗面器などの皮脂汚れを落とす
- クエン酸と合わせて使い、いろいろな汚れを落とす
- アクアリウムに使う流木のアク抜き
- 靴の消臭
- スライムを作って遊ぶ
などなど。
特に、『重曹を掃除や洗濯に使う』というのは有名ですよね。
一方、ベーキングパウダーは料理にしか使えません。
『焼いて膨らませる料理』に使うために作られているからです。
関連記事:焦げ付き五徳の汚れの落とし方(洗い方)を解説【つけおきで掃除】
関連記事:やかんの焦げ落としは重曹磨きが一番なの?最善のやり方を解説!
関連記事:流木のアク抜き処理のやり方を解説!塩抜きも同じ方法?【重曹の使い方】
安全性に違いはある?
その気持ちは当然ですよね。
でも、重曹もベーキングパウダーも、料理に使うくらいの量なら無害です。
メモ
重曹は摂取しすぎると塩分の摂りすぎになってしまいます。
ふくらし粉や肉の下処理などで使う分には問題ありませんが、意図的に重曹水を毎日飲んだりするのは、あまりおすすめしません。
『ベーキングパウダーにはアルミが入っている』と聞いて気になる人もいるでしょうが、
- アルミは豆や海藻など、他の食品にも含まれている
- 膨らし粉として加えるだけのベーキングパウダーに含まれている量のアルミで体に悪影響があるとは考えられない
- 体に取り込まれたアルミは99%がそのまま排出され、体に吸収された残り1%のアルミも腎臓を通して尿と一緒に排出される
- 万が一アルミを摂取しすぎた場合でも、ちゃんと排出される
ということから、人体には何の害もありません。
一時期、
『アルミがアルツハイマー型認知症の原因ではないか』
などと言われたこともありますが、科学的根拠に乏しいことがわかり、現在は否定されています。
重曹でもベーキングパウダーでも、安心して使ってくださいね!
関連記事:重曹水を飲む副作用やデメリットまとめ!危険な摂取量とは?
重曹とベーキングパウダーはお互いに代用できる?
焼き菓子やパンなどならOK!
焼き菓子やパンなど、『焼いて膨らませる料理』に使うのであれば、
- 重曹の代わりにベーキングパウダーを使う
- ベーキングパウダーの代わりに重曹を使う
というのは、OKです。
ただし、
- 入れる分量の調整
- 焼くタイミング
に注意が必要です。
重曹とベーキングパウダーを互いに代用するときの分量
代用するときの分量は、
ベーキングパウダーの代わりに重曹を使う
⇒レシピに書いてあるベーキングパウダーの量の半分
重曹の代わりにベーキングパウダーを使う
⇒レシピに書いてある重曹の量の2倍
これを目安に調整してください。
重曹を入れる量が多いと、苦みが強く出てしまいます。
逆にベーキングパウダーを入れるのが少なすぎると、十分膨らみません。
代用するときの焼くタイミングは?
先にも書いたように、重曹とベーキングパウダーでは焼き始めのタイミングも違います。
重曹の代わりにベーキングパウダーを使う
⇒生地を寝かさずにすぐに焼く
ベーキングパウダーの代わりに重曹を使う
⇒寝かしてもOKだが、酸性の食材が入っている場合はすぐに焼く
ということに注意してください。
生地に膨らし粉を加えてから寝かせる工程が必要な料理の場合は、ベーキングパウダーで代用しないほうが良いですよ。
アク抜きにベーキングパウダーを使っても大丈夫?
ベーキングパウダーにも重曹が入っているのであく抜きはできます。
でも、あまりおすすめはしません。
ベーキングパウダーをあく抜きに使うと
- 重曹より量が必要。(ベーキングパウダーは重曹より高いためコストがかかる)
- 重曹以外の成分も入っているため、鍋の底に沈殿物ができる
- 重曹でアク抜きをするよりきれいな色にならない・色ムラができる
といったデメリットもあるからです。
ベーキングパウダーであく抜きするのは、やむを得ないときだけにしておいたほうが良いですよ。
また、アク抜きで代用する場合も、ベーキングパウダーの量を調整する必要があります。
たとえば、日清のベーキングパウダーには、炭酸水素ナトリウム(重曹)は26%入っています。
重曹を100%として計算すると、ベーキングパウダーは重曹の量の約3.8倍必要ということになります。
ベーキングパウダーの量は
100 ÷ ベーキングパウダーに入っている重曹の割合(%) × 必要な重曹の量
で計算してください。
ベーキングパウダーは掃除にも使える?
『ベーキングパウダーに重曹が入っているなら、掃除にも使えるのでは?』と思う人もいるかもしれませんが、
ベーキングパウダーを掃除に使うのはやめましょう。
ベーキングパウダーを掃除に使っても、
- 重曹以外の成分のほうが多いため、重曹ほどの効果がない
- 『でん粉成分』が入っているため、掃除のために水分を加えるとベタベタになってしまう
- ベーキングパウダーのほうが価格が高いので、コスパが悪い
ということから、デメリットの方が大きいです。
ベーキングパウダーは、料理にだけ使いましょう。
食用の重曹を掃除に、掃除用の重曹を食用に代用できる?
それは、
食用重曹を掃除に使う
⇒OK
掃除用重曹を食品に使う
⇒NG
です。
食用の重曹は純度も高いですし、食品に入れて使った場合の安全性も確認されています。
でも、掃除用の重曹は純度が低く、食用として使った場合の安全性は担保されていません。
掃除用重曹は食品に使わないでください。
なお、掃除に使える重曹でも、パッケージに『食品添加物』と書いてある重曹は食品に使って大丈夫です。
関連記事:掃除用の重曹を食べてしまったけど大丈夫?食用との違いをチェック!
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まとめ
重曹とベーキングパウダーの最大の違いは、成分です。
重曹
⇒炭酸水素ナトリウム
ベーキングパウダー
⇒炭酸水素ナトリウムの他にいろいろな成分が入っている
という違いがあります。
その他にも、
- 重曹は焼き上がりの色が濃くなったり独自の風味が加わったりするが、ベーキングパウダーは色や風味に影響しない
- 重曹は和菓子に使うことが多く、ベーキングパウダーは洋菓子に使うことが多い
- 重曹はアク抜きや下処理などにも使えるが、ベーキングパウダーは膨らませる目的にしか使わない
- 重曹は掃除や消臭などにも使えるが、ベーキングパウダーは料理にのみ使う
といった違いがあります。
重曹とベーキングパウダーは、
生地を膨らませるために使うなら、互いに代用できます。
でも、重曹の代わりに、
ベーキングパウダーを掃除に使うことはできません。
『重曹は多用途、ベーキングパウダーは生地を膨らませる専用のアイテム』
と覚えて、上手に使い分けてくださいね!