アルカリ性のお掃除アイテムには、『重曹』や『セスキ炭酸ソーダ』の他に
『過炭酸ナトリウム』もあります。
この過炭酸ナトリウムと重曹には、性質や使い道、危険性などいろいろな違いがあります。

はい、洗濯槽クリーニングも使い道の1つですね。
どちらが良いか、確認しておきましょう。
ということで、この記事では
- 過炭酸ナトリウムと重曹のいろいろな違い
- 過炭酸ナトリウムと重曹のどちらが洗濯槽クリーニングに使えるか
- 過炭酸ナトリウムと重曹の危険性
について解説していきます。
ぜひ読んでくださいね!
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過炭酸ナトリウムと重曹は何が違う?
見た目はどう違う?
市販の過炭酸ナトリウムと重曹の見た目は、
どちらも『白い粉末』です。
過炭酸ナトリウムには無色のものもあります。
でも、私たちが手にする製品は、白い粉末であることがほとんどです。
パッケージから出すと区別が難しくなるので、必ず買ったときのパッケージのまま保存しておきましょう。
材料となる物質や製造方法の違い
過炭酸ナトリウムも重曹(炭酸水素ナトリウム)も、『炭酸』と『ナトリウム』という言葉が付いていますね。
でも、
過炭酸ナトリウム
⇒炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)と過酸化水素水を混ぜたもの
|
重曹(炭酸水素ナトリウム)
⇒食塩を電気分解し、二酸化炭素を加えたもの
|
という風に、それぞれまったく違う物質を材料としていて、まったく違う作られ方をしています。
当然、性質や特徴も違ってきます。
アルカリ性の強さの違いは?
過炭酸ナトリウムも重曹も、『アルカリ性である』ということは同じです。
でもアルカリ度の強さを比べてみると、
過炭酸ナトリウム
⇒pH10.5
重曹
⇒pH8.4
と、過炭酸ナトリウムのほうがアルカリ性が強いです。
使い道や効果の違い

洗濯物などの漂白作用があるのは、過炭酸ナトリウム
過炭酸ナトリウムと重曹の使い方や効果を比べてみましょう。
使い道の違い
過炭酸ナトリウムの使い道は
- 漂白(洗濯物などを白くする)
- 殺菌作用を利用して、洗濯物などの除菌をする
- 垢や血液汚れなど、たんぱく質の汚れを分解する
- 油汚れを分解して落とす
一方で重曹は、
- 食べものを膨らませる(膨らし粉や飲み物の発泡剤など)
- 山菜などのアク抜き
- 食材を柔らかくしたり臭みを取り除いたりする
- 油汚れの掃除や焦げ落とし
- クレンザー代わり
- におい消し
- 除湿剤
- 洗濯のときに、泡立ちを良くしたり衣類を柔らかくしたりするために入れる
といったことに使われます。
『油汚れを落とす』という効果は、どちらにもあります。
ただ、過炭酸ナトリウムのほうが効果が高いです。
一方で重曹は、クレンザー代わりに使ったり食品にも使ったりと、用途が幅広いのが特徴です。
効果の高さや向き不向きの違い
次に、
- 過炭酸ナトリウムと重曹はどんな場面で効果を発揮するのか
- 用途別の向き不向き
を比べてみましょう。
過炭酸ナトリウム | 重曹 | |
鍋の焦げ落とし | できるが重曹ほど効果は高くない | 効果がある |
研磨剤としてつかう | できない | できる |
消臭効果 | ある | あるが、過炭酸ナトリウムほど強くはない |
プラスチック容器のヌメリ取り | 効果あり | ある程度できる |
油や皮脂、たんぱく質の汚れ落とし | 重曹よりも効果がある 洗濯の時にも効果あり | できる 掃除の時に効果あり |
衣類の漂白や黄ばみ落とし | 適している | できない |
洗濯機の殺菌や消臭 | 適している | できない |
食品に使う | 食品には使えない | 食用に限りできる (掃除用は食品には使わない方が良い) |
参考 人と環境に優しいナチュラルクリーニング『それぞれ得意なことが違うんです』
このように、使い道にも効果のほどにも違いがあります。
適材適所で上手に使い分けてくださいね。
使ってはいけない素材の違いは?
過炭酸ナトリウムにも重曹にも、『使ってはいけない素材』があります。
共通しているのは、『アルカリ性に弱い素材には使ってはいけない』ということです。
どんな素材かというと、
- 水洗いできない物
- 銅やアルミ、アルミを含む合金
- 木製のもの
- 漆器
- ガラス
- ゴム
- アクリル樹脂
- 液晶画面やレンズなど、コーティングがされている製品
- ウール、シルク、革など、動物性の素材
- 貴金属・宝石類
- アルカリ性で傷んだり剥がれたりする可能性のあるコーティングがしてあるもの
といったものです。
さらに、
『重曹では大丈夫でも過炭酸ナトリウムでは傷む』
ということもあります。
過炭酸ナトリウムのほうが、重曹よりもアルカリ性が強いからです。
過炭酸ナトリウムが使えない物は、
- 水に濡れたり洗濯用石鹸・洗剤を使ったりすると色落ちする
- ステンレス以外の金属でできている
- 鉄を使った塗料で塗られている
- 草木染や金属染料で染めてある
といった物です。
そして、上に挙げた以外の素材でできていても、状況によっては重曹や過炭酸ナトリウムで傷む可能性があります。
使っても大丈夫かどうか判断できない場合は、
最初は目立たない所に少しだけ付けてみて、変色や変質が起きないか試してから使ってください。
洗濯槽クリーニングに使えるのはどっち?
過炭酸ナトリウムも重曹も、『洗濯槽クリーニングに使える』という話があります。
でも、
洗濯槽クリーニングをするなら、過炭酸ナトリウムです。
重曹はおすすめしません。
なぜかというと、重曹は
- 水に溶けにくく、溶け残りしやすい
- 洗浄力が弱い
- カビを退治する効果は期待できない
- 洗濯槽をクリーニングするためには大量の重曹が必要
- 大量の重曹を入れると、重曹が溶け切れずに洗濯槽の穴を詰まらせてしまうことがある
- ドラム式洗濯機の場合、溶け残った重曹が内部で詰まってセンサーの不具合を起こす可能性がある
など、デメリットのほうが大きいからです。
洗濯槽クリーニングには、過炭酸ナトリウムを使ってくださいね。
なお、過炭酸ナトリウムはドラム式洗濯機にも使えますが、
洗濯が始まったら終わるまでドアが開けられないタイプの洗濯機では、使わないでください。
ドラム式洗濯機では、故障を防ぐためにすすぎの前に汚れを網で取り除く必要があるのですが、この作業ができないからです。
過炭酸ナトリウムと重曹の危険性は?

危険性もしっかりチェック
過炭酸ナトリウムや重曹は、自然界にも存在している成分であることから『ナチュラル素材』『天然素材だから安全』などと言われることがよくあります。
でも、
『自然界にも存在している成分なら安全』というのは誤解です。
どんな物でも使い方や量によっては体に害が出る可能性がありますし、過炭酸ナトリウムや重曹も例外ではありません。
ここからは、過炭酸ナトリウムと重曹の危険性と注意点について見ていきましょう。
肌に対するリスク
過炭酸ナトリウムも重曹も、
過炭酸ナトリウム
⇒タンパク質を分解する作用が強いので、肌に付くとたんぱく質が溶けてヌルヌルになる
重曹
⇒過炭酸ナトリウムほどではないが、肌が荒れることがある
という風に、肌に対して影響が出ます。
過炭酸ナトリウムや重曹を使うときは、必ず手袋をしましょう。
特にアトピーのある人や肌の弱い人は、注意してください。
|
また、過炭酸ナトリウムが肌についてしまった場合は、放置せずに
- すぐに流水で丁寧に洗い流す
- 酢やクエン酸で中和する
という対応をしてください。
肌に違和感が続くようであれば、医師に相談してくださいね。
口に入れたり飲んだりしてしまった場合の危険性
口に入れたり飲んだりしてしまった時の危険性は、過炭酸ナトリウムのほうが高いです。
過炭酸ナトリウム
⇒粘膜への刺激性や毒性があるため、口や喉の痛み、吐き気や胃の不快感などの症状が出る
重曹
⇒口の中の粘膜を痛めてしまう可能性がある
⇒食べてしまっても少しくらいなら問題ないが、量が多かったり継続的に摂取したりすると塩分やナトリウムの摂りすぎになる
過炭酸ナトリウムは絶対に口に入れてはいけません。
体に入ると吐き気などの症状が出るほか、量や状況によっては呼吸困難やチアノーゼ、昏睡状態などに至ってしまうこともあります。
ポイント
重曹は、掃除用であっても、少し口に入ったくらいでは問題ありません。
ただし掃除用の重曹は食用よりも安全基準が低いので、やはり口に入れないほうが良いです。
目に入ってしまった場合は?

痛みが残るなら早めに病院へ
過炭酸ナトリウムや重曹など、アルカリ性のものが目に入ると、目の組織を傷めてしまいます。
過炭酸ナトリウムも重曹も、目に入ってしまった場合は
- すぐに、流水で最低15分、しっかり洗い流す
- 洗っても痛みや違和感がある場合は、できるだけ早めに眼科を受診する
という対応をしてください。
場合によっては目の奥のほうまで傷めてしまうことがあるので、絶対に放置してはいけません。
すぐに洗ってくださいね。
また、『これくらいなら我慢できるかな』という場合も、念のため眼科で診てもらってください。
ハラハラしながら我慢するより、医師に正確な判断をしてもらったほうが安心です。
保管するときに気をつけること
過炭酸ナトリウムも重曹も、保管には危険性に応じた注意が必要です。
洗剤を保管するときの基本的な注意点
過炭酸ナトリウムと重曹に共通の保管上の注意は
- 子どもやペット、認知症のある人の手の届かない場所に保管する
- 中身が正確にわかるようにして保管する
ということです。
誤飲・誤食事故で多いのは、やはり子どもや認知症のある人による事故です。
小さい子のいる家庭では、特に気を付けてくださいね。
また、
- 飲み物や調味料などと間違えかねない容器
- 他の洗剤などと間違えかねない容器
に入れて保管するのは、絶対にやめましょう!
『過炭酸ナトリウム水を炭酸飲料のペットボトルに入れたために、誤飲事故につながった』
というケースも実際にあります。
過炭酸ナトリウムは重曹よりも注意が必要
さらに、過炭酸ナトリウムは重曹よりも保管に注意が必要です。
洗剤の基本的な保管上の注意に加えて、
- 買ってきたパッケージのまま(他の容器に移し替えずに)保存する
- パッケージに開いているガス抜きの穴をふさがない
- 直射日光や高温多湿を避けて保存する
- 過酸化ナトリウムを水に溶かした液はその都度使い切るようにして、密閉容器に保存しない
ということを必ず守ってください。

それは、過炭酸ナトリウムは酸素を出すからです。
酸素が出ているのに密閉してしまったら、袋や容器が破裂しかねません。
そして袋が破裂して周りの可燃物に過炭酸ナトリウムが付くのも、危ないのです。
次に過炭酸ナトリウムの危険性について、さらに見ていきましょう。
過炭酸ナトリウムは『危険物』に指定されている
過炭酸ナトリウムと重曹のもう1つの違いは、
『過炭酸ナトリウムは、法律で【危険物】に指定されている』ということです。
過炭酸ナトリウムはなぜ危険物に指定されている?
なぜ過炭酸ナトリウムが『危険物』に指定されているのか、簡単に言うと、
- 他の物質を酸化させる作用が強い
- 熱や摩擦などによってたくさんの酸素を放出し、周りの可燃物に燃焼を起こさせる危険性がある
- 可燃物や有機物、酸化しやすい物質と混ぜると、加熱や衝撃などによって爆発する危険性がある
ということからです。
メモ
過炭酸ナトリウムは、『単体で置いておいても、何もしなくても燃える』ということはありません。
指定の危険物として守らなければならないことは、一般家庭では
『25kg以上保管する場合は、所轄の消防署に届け出をする』
ということです。
でも一般家庭で25kgもの過炭酸ナトリウムを持ってるなんて、そうそうないですよね。
普通に買って使う分には、特別な届け出は要りません。
捕捉
ざっくり『25㎏以上』と書きましたが、実際には過炭酸ナトリウムの種類によって届出の必要な量は違います。
また、主成分が『過炭酸ナトリウム』となっていても、危険物には該当しない製品もあります。
過炭酸ナトリウムの危険物指定について詳しくは、こちらのサイトを見てください。
参考 総社市消防本部『炭酸ナトリウム過酸化水素付加物」(過炭酸ナトリウム)が危険物に追加されました。』
過炭酸ナトリウムを安全に使うには

大丈夫です。
使い方や保管の仕方をきちんと守れば、危ないことはありません。
過炭酸ナトリウムの保管の仕方をおさらいしておきましょう。
- 買ってきたパッケージのまま(他の容器に移し替えずに)保存する
- パッケージに開いているガス抜きの穴をふさがない
- 直射日光や高温多湿を避けて保存する
- 過酸化ナトリウムを水に溶かした液は使い切るようにして、長期保存しない・密閉容器に保存しない
- 子どもやペット、認知症などがある人の手の届かない場所に保管する
ということを守ってください。
特に
- 別の洗剤の容器に移し替える
- 調味料や飲料など、口に入れるものの容器に移し替える
というのは厳禁です。
もちろん、パッケージの使い方や使用上の注意も必ず守ってくださいね。
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まとめ
過炭酸ナトリウムと重曹の違いは、
- 過炭酸ナトリウムのほうが、重曹よりもアルカリ性が強い
- 過炭酸ナトリウムは、たんぱく質汚れを分解でき、漂白や殺菌作用もある。重曹は漂白・殺菌作用はない
- 重曹は食用なら食べ物にも使えるが、過炭酸ナトリウムは食べ物には使えない
- 過炭酸ナトリウムは洗濯槽クリーニングに向いているが、重曹は向いていない
といったことです。
安全性についても違いがあり、
過炭酸ナトリウムは肌に付く、口に入る、目に入るといった場合の危険性が高く、健康被害が出る可能性も重曹より高いです。
扱いや管理には、十分注意してください。
重曹は、目に入った時以外は過炭酸ナトリウムほどの危険性はありません。
少しくらいなら、食べてしまっても大丈夫です。
ただし重曹も、量によっては健康被害につながりかねないので、摂りすぎには注意しましょう。
過炭酸ナトリウムも重曹も、使い方や注意点を守って使えば、とても役に立ちます。
上手に使いこなしてくださいね!