冬のガス代を見ると、「給湯を灯油にしたら安くなる?」と考えたくなります。お湯は欲しい。でも、シャワーまで節約のために急ぐのはつらいです。
一方で、灯油の配達伝票にもそれなりの金額が並びます。灯油なら何でも安い、とはいかないんですよね。
- 灯油ボイラーとプロパン給湯器では、お湯代はどちらが安い?
- 灯油が1L何円になったら、プロパンのほうが安くなる?
- 給湯を灯油にしても、コンロのプロパン代は残る?
仮定の機器効率で比べると、プロパン600円/m³に対し、燃料費が同額になる灯油価格は約233円/Lです。灯油140円/Lなら灯油が安く、240円/Lならプロパンが安くなります。
ただし、この233円はどの家にも当てはまる相場ではありません。自宅のプロパン単価、灯油の購入条件、給湯器の効率で変わる金額です。燃料費の差と、家計から出ていく総額にも違いがあります。
単価で結果が変わる灯油ボイラーとプロパン給湯器、安さが逆転する条件

灯油の「円/L」とプロパンの「円/m³」は、そのままでは比べられません。燃料1単位で沸かせるお湯の量が違うためです。
比較するのは、同じ量の水を、同じ温度まで温める燃料費。単価の桁だけで選ぶと、安いと思ったほうが高かった、なんてことも起きます。
仮定:プロパンの総発熱量を100MJ/m³、灯油を36.60MJ/Lとし、給湯のモード熱効率はプロパン80.9%、灯油86.0%とします。どちらも総発熱量(高位)基準で比べ、単価は税込み、灯油は配達費込みです。基本料金・設備料金・電気代は別にかかります。
この条件なら、燃料1単位からお湯に渡る熱はプロパン80.9MJ/m³、灯油31.476MJ/L。燃料費が同額になる灯油単価は、次の式で求まります。
逆転する灯油単価=プロパンの従量単価×(36.60×0.86)÷(100×0.809)
| プロパンの従量単価 | 燃料費が同額になる灯油単価 |
|---|---|
| 500円/m³ | 約194.5円/L |
| 600円/m³ | 約233.4円/L |
| 700円/m³ | 約272.4円/L |
灯油の実際の単価が逆転価格より低ければ灯油、高ければプロパンの燃料費が安くなります。プロパンが高い契約ほど、灯油が値上がりしても灯油のほうが安い範囲が広がるわけです。
お湯の量は、この逆転価格の式には残りません。同じ湯量・温度差で、効率を一定とした比較だからです。お湯を多く使う家では、安いほうを選んだときの差額が大きくなります。
お風呂と台所で月いくら?1日300Lのお湯を使う家庭の燃料費
15℃の水を40℃にする、という仮定
湯船のお湯に、シャワーや台所のお湯も加えた40℃換算で1日300Lを仮定します。給水温度は15℃、使用日数は30日です。給湯器で熱いお湯をつくって水と混ぜる場合も、温度をそろえた湯量で表せます。
水1Lを約1kg、水の比熱を4.186kJ/(kg・℃)とすると、必要な熱量は300×(40−15)×4.186÷1,000=31.395MJ/日。MJは熱量の単位です。
前の仮定と同じ発熱量・効率なら、1日の燃料使用量は次のようになります。
- プロパン:31.395÷(100×0.809)=約0.388m³
- 灯油:31.395÷(36.60×0.86)=約0.997L
| 給湯の燃料 | 30日間の使用量 | 税込単価 | 30日間の燃料費 |
|---|---|---|---|
| プロパン | 約11.642m³ | 600円/m³ | 約6,985円 |
| 灯油 | 約29.923L | 140円/L・配達費込み | 約4,189円 |
| 灯油 | 約29.923L | 240円/L・配達費込み | 約7,181円 |
灯油140円/Lなら差額は30日で約2,796円。240円/Lでは、プロパンが約196円安くなります。
この湯量は蛇口で使うお湯の加熱分です。配管で冷める分や浴槽の追い焚き・保温には、蛇口で使うお湯を温める分に加えて熱が必要になります。
冬の水温が5℃なら、必要な熱は1.4倍
冬に給湯費が増えても、使い方が急に雑になったとは限りません。冷たい水を温めるだけで、燃料が多く必要になります。
| 給水温度 | 1日の必要熱量 | プロパン600円/m³ | 灯油140円/L |
|---|---|---|---|
| 5℃ | 約44.0MJ | 約9,779円 | 約5,865円 |
| 15℃ | 約31.4MJ | 約6,985円 | 約4,189円 |
| 25℃ | 約18.8MJ | 約4,191円 | 約2,514円 |
水温5℃では、15℃のときに必要な熱量の1.4倍です。夏と冬の月額を並べるだけでは、燃料を替えた効果と季節の差が混ざってしまいます。冬の皿洗いでお湯を止めたくない気持ちも、ちゃんと料金に響くんですよね。
効率の数字にも種類がある石油給湯器とガス給湯器、機種で差はどう変わる?
同じ「モード熱効率」と総発熱量基準で比べる
給湯器の効率には、連続運転で測る熱効率と、短い出湯など家庭のお湯の使い方を想定したモード熱効率があります。カタログの大きな「95%」と、別の機種のモード熱効率を並べると、測り方まで違ってしまいます。
ノーリツの家庭用機種では、従来型ガス給湯器GQ-2439WS-1のモード熱効率は80.9%、石油給湯機OQB-4706Yは86.0%です。実際の効率は、お湯を使う回数や長さでも変わります。
灯油の総発熱量は、資源エネルギー庁の2023年度改訂値で36.60MJ/Lです。改訂は2025年公表、資料は2026年3月に一部追加改訂。LPGの50.12MJ/kgは重量当たりの値で、家庭の請求に使うm³とは単位が違います。プロパンの体積当たりの概算は約100MJ/m³。ガスの組成や温度・圧力で、この熱量にも差が出るため、計算上の仮定です。
「石油機器の効率は全部、真発熱量(低位)基準」と扱うと、家庭用機器の効率を誤って換算してしまいます。古い資料やボイラーの仕様には低位基準の表示もあるため、機器と測定基準の組み合わせで変わります。
総発熱量は、燃焼でできる水蒸気が水に戻るときの熱まで含んだ値。真発熱量は、その分を含まない値です。同じ機器でも、真発熱量で割った効率のほうが高く表示されます。
換算だけの仮定例:灯油の効率が真発熱量基準で90%なら、真発熱量34.38MJ/Lと総発熱量36.60MJ/Lの比から、総発熱量基準では90%×34.38÷36.60=約84.54%となります。前の計算に使った86.0%は総発熱量基準のモード熱効率で、この換算は不要です。
エコフィール・エコジョーズなら、逆転価格も動く
排気の熱を回収する高効率の石油給湯機がエコフィール、ガス給湯器がエコジョーズです。同じお湯をつくる燃料が少なくなるため、従来型同士の結果とは変わります。
日本ガス石油機器工業会によるエコフィールの仕組みの紹介動画です。
石油側の効率が上がれば、灯油はより高い単価までプロパンより安くなります。反対にガス側の効率が上がれば、プロパンが安くなる灯油単価は下がる仕組みです。逆転価格は、燃料単価と機器効率の両方で変わります。
動画の節約額は、想定した使用条件による試算です。交換工事や本体代もかかるため、燃料費が下がった分がそのまま交換による利益にはなりません。ガス給湯器同士の交換費用と節約額の関係は、エコジョーズは元が取れる?プロパンで回収年数を計算で扱っています。
安くなった分だけ請求が減る?基本料金・配達費・タンクの手間も残る

コンロにプロパンを残すと、基本料金も残る
給湯を灯油に替えても、調理用のプロパン契約が続けば基本料金はかかります。基本料金はガスの使用量とは別の固定的な費用です。給湯器を替えたらガスの請求が全部消える、という計算にはなりません。
仮定:基本料金が税込2,000円、調理で月2m³、従量単価600円/m³なら、調理分は1,200円です。前の給湯例では、プロパンだけなら2,000+1,200+6,985=約10,185円。給湯を灯油140円/Lにした場合は、2,000+1,200+4,189=約7,389円となります。
この仮定で減るのは給湯の燃料費の差、約2,796円です。残る基本料金2,000円まで節約額に足すと、差を大きく見積もってしまいます。設備料金などがある契約では、その支払いが続くかも総額に影響します。
灯油は、タンクまで届いた費用で差が出る
店頭の看板の価格と、家のタンクへ配達してもらう価格では購入条件が別です。配達料が別なら、その金額も灯油代に加わります。仮定の140円/Lは、税込み・配達費込みの単価です。
自分で買いに行く家庭では、運搬や給油の時間もかかります。18Lのポリタンクを車から下ろすと、数字より先に腰が反応します。安さと、その作業を続けられるかは両方気になるところです。
タンクを使う家庭なら、残量の確認、配達の注文、設備の点検もあります。ガスへ替える工事費、灯油側のタンク設置・撤去費は設置条件で変わるため、燃料費の月額とは別の見積もりです。
石油給湯機でも、制御や凍結防止ヒーターなどの電気代がかかります。配管の長さ、お湯を出す回数、追い焚き・保温の使い方も、実際の支出が変わる理由です。
燃料を替える前にもできること自宅のプロパン単価と灯油の配達価格を確かめる
自宅の比較に必要なのは、プロパンの税込みの従量単価、灯油の税込み・配達費込みの単価、使っている給湯器の型番と効率です。ガス料金の総額を使用量で割った値には、基本料金や設備料金も含まれます。
単価が検針票に載っていない場合は、プロパンガスの従量単価、検針票にない?請求額から円/m³を出せるに計算例があります。段階別の単価や原料費調整がある契約では、給湯で増減する使用量によっても従量料金が変わる点に注意が必要です。
ガス会社には「調理用の契約を残したときの基本料金と、月○m³の場合の税込請求額」、灯油の販売店には「自宅への配達料を含む税込価格」と聞くと、両方の支払い条件が具体的になります。給湯器の型番は本体の銘板に記載されています。高所など危険な場所の確認は、業者への依頼が必要です。
仮定の効率のまま灯油が140円/Lなら、逆転するプロパン単価は約360円/m³です。プロパンが600円/m³なら灯油が安い結果ですが、ガスの単価が下がれば結果も変わります。
プロパンの単価が高くて灯油のほうが安い家庭には、燃料の変更と並んで、ガス料金を見直す選択肢があります。エネピを使った比較方法はこちらのプロパンガス料金の見直し・比較です。変更できる会社や契約条件は、地域と現在の契約で異なります。
FAQ
灯油が18Lで2,520円なら、1Lいくらですか?
仮定の購入額2,520円÷18L=140円/Lです。2,520円が税込みで、別途配達料がなければ、税込み・配達費込みで140円/Lになります。配達料が別の注文では、支払総額を購入量で割った単価のほうが高くなる点に注意が必要です。
灯油を買った月と、使った月が違うと比較できませんか?
購入月だけの支払いでは、タンクに残った灯油も含まれます。期間中の消費量は「開始時の残量+購入量−終了時の残量」ですが、タンクの残量表示だけでは細かな量まで分からない場合もあるんです。残量が同程度になる期間で比べると、在庫の増減による差が小さくなります。
1日に使うお湯が150Lなら、燃料費も半分ですか?
給水温度と出湯温度、効率が同じ仮定なら、加熱に必要な熱量と燃料費は300Lの例の半分になります。実際には短時間の出湯や待機中の損失もあるので、給湯量が半分になっても請求総額まで半分になるとは限りません。基本料金も湯量に比例しない費用です。
部屋の暖房も、灯油とプロパンで同じ結果ですか?
暖房はお湯を使う量ではなく、暖房能力や運転時間などで費用が決まります。ファンヒーターの比較例は、ガスファンヒーターと石油ファンヒーターを比較!プロパン単価で安さが逆転?に載っています。
まとめ
灯油ボイラーとプロパン給湯器のお湯代は、「灯油だから安い」「ガスだから高い」では決まりません。同じ熱量をお湯に渡す費用で比べると、単価と機器効率による差がはっきりします。
プロパン600円/m³、総発熱量基準のモード熱効率がガス80.9%・石油86.0%という仮定では、境目は灯油約233円/L。1日300Lを15℃から40℃へ温める30日間なら、灯油140円/Lの燃料費はプロパンより約2,800円少なくなります。
家計の支払いには、残るプロパンの基本料金、灯油の配達料、設備にかかる費用もあるんです。給湯器を替える前に自宅の単価が分かれば、料金見直しで済むのか、灯油を続けるほうが得なのかを具体的に比べられます。毎日のお湯くらい、気兼ねを少なく使いたいですよね!