都市ガスとプロパンガスでは、いろいろな違いがあります。
その1つが『火力や熱量が違う』ということ。
『都市ガスよりプロパンガスのほうが、火力が強く、熱量が多い』
と、よく言われます。
そのため、都市ガスが使える地域でも、あえてプロパンガスを使っている飲食店も多いのです。
では、都市ガスとプロパンガスでは、熱量や火力に、どのくらいの差があるのか?
ということで今回は、
都市ガスとプロパンガスの、熱量や火力の違い
について解説します。
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都市ガスとプロパンガス火力や熱量の違い
都市ガスとプロパンガス、熱量はどのくらい違う?
都市ガスとプロパンガスの熱量の違いを、1立方メートル当たりで比べると、
都市ガス
⇒約11,000Kcal
プロパンガス
⇒約24,000Kcal
と、このくらいの違いがあります。
同じ量のガスだと、
プロパンガスは都市ガスの2倍強の熱量
ということですね。
熱量が違うと、どんなことが違ってくる?
数字だけで熱量を見ても、ピンと来ないかもしれませんね。
もう少し、生活に近いことで比べてみましょう。
熱量が違うと、ガスの使用量が違う
お風呂を沸かす時のことを、例として挙げます。
- お湯の量は200L
- 水温は15℃から40℃まで上げる(温度の上げ幅が25℃で、必要な熱量は5,000Kcal)
- 熱効率は80%
という条件で比較します。
必要なガスの量=5,000Kcal÷(1立方メートル当たりの熱量×熱効率)という式から
都市ガス
⇒5,000Kcal÷(11,000Kcal×0.8)=0.57立方メートル
プロパンガス
⇒5,000Kcal÷(24,000Kcal×0.8)=0.26立方メートル
このように、
同じ熱量が必要な場合、プロパンガスは都市ガスの約半分の量で済む
ということなのです。
熱量の違いから、都市ガスとプロパンガスの使用量を比べる時は、
都市ガスの使用量=プロパンガスの使用量×2.2
として、ガスの使用量を調整して比べることが多いんですよ。
熱量が違うと料金も違う?

そう思うかもしれませんね。
もし料金が同じであれば、プロパンガスは都市ガスの半分くらいのガス代で済むことになります。
しかし!
実際には、プロパンガスの従量料金は、都市ガスの1.5~2倍近くになることも珍しくありません。
たとえば、24,000kcalあたりで比べると、群馬県の場合、
都市ガス
⇒288.9円
プロパンガス
⇒507円
ですから、残念ながら『量が少なくて済むから、ガス代も少なくて済む』というわけにはいかないのです。

いえいえ、都市ガスとプロパンガスの料金がこれだけ違うのは、熱量の違いではなく、
- 供給にかかるコスト
- 自由料金になった時期
- ガス業界の体質
などが違うからです。
豆知識
プロパンガスでもガス代を安くする方法はあります。
それは
ガス会社変更サービスで、適正価格のガス会社を紹介してもらう
という方法。
プロパンガスを使っている人は、検討してみてください。
都市ガスとプロパンガスで熱量が違う理由

それは原料や成分が違うからです。
都市ガスは、メタンが主原料の『液化天然ガス』。
メタンは石炭を生成する時にできるガスです。
それに対してプロパンガスは、プロパンやブタンを主原料とする『液化石油ガス』。
『液化石油ガス』という名前の通り、石油を精製する時に副産物的にできたガスを精製して作られます。
都市ガスとプロパンガスの違いについては、次の記事で詳しく解説しています。
関連記事:プロパンガスと都市ガスとLPガスと天然ガスの違いをチェック!
都市ガスとプロパンガスの火力の差
都市ガスとプロパンガスでは、『火力』の差はどうでしょうか。
『ガスそのものに直接火をつけた』場合で比べると、
プロパンガスのほうが、火力が強いです。
そのため、金属の溶接でガスを使う工場や火葬施設など、強い火力が必要になる施設では、プロパンガスを使うことが多いのです。
ただし、実際の『火力』はガス器具のスペックによって決まります。
『2,000Kcalの火力』のガス器具であれば、都市ガスでもプロパンガスでも、2,000Kcalの火力が出せます。
- プロパンガスだから、2,000Kcalのガス器具でも4,400Kcal出る
- 同じスペックのコンロだと、都市ガス用のほうがお湯が沸くのが遅い
なんてことはありません。
都市ガスとプロパンガス熱量や火力以外の違い
都市ガスとプロパンガスのいろいろな違い
プロパンガスと都市ガスでは、熱量や火力以外にも違いがあります。
都市ガス | プロパンガス | |
ガスの重さ | 空気より軽く、ガスは上の方へ行く。 ガス漏れ警報器は上に設置する。 | 空気より重く、下の方に滞留する。 ガス漏れ警報器は下に設置する。 |
供給方法 | 地下のガス管を通して供給する。 | ガスボンベを配送して供給する。 |
使える地域 | ガスの導管が埋設されている地域。 | ガスボンベが安全に置ければ、どこでも使える。 |
災害時の復旧 | 地下の導管の点検などが必要で、点検や修理には時間がかかる。 | ガスボンベからガス管、ガス器具に異常がないことが確認できればすぐ復旧できる。 |
初期工事 | 地下のガス管から家にガスを引きこむ工事が必要。初期費用が高い。 | ボンベ設置とガス管などの設置工事のみ。初期費用が安く済む。 |
ガス料金 | プロパンガスより安いことが多い。ガス供給に必要な人件費が安いため。 | ボンベ配送などで人件費がかかるため、都市ガスより高いことが多い。 特に過疎地域や豪雪地帯、離島などでは料金が高くなる。 |
料金の自由化 | 2017年4月に自由化 | 元から自由料金 |
ガス会社を切り替えた時の 節約効果 | 規制料金の頃の料金を引き継いでいるので、ガス会社を変えても大きな節約効果はない。 | 状況にもよるが、ガス会社を切り替えると節約効果が期待できる。 |
都市ガスとプロパンガスの供給の方法が違うのは、成分の性質が違うからです。
都市ガスの成分であるメタンは、-160℃と、非常に低い温度でないと液体になりません。
そのため、常温で液体にして、ガスボンベに詰めることができません。
だから気体のまま、ガス管を通して供給するのです。
一方、プロパンガスは常温でも液体にできるので、ボンベに詰めて配送することができます。
都市ガスとプロパンガスではガス器具も違う
都市ガスとプロパンガスでは、ガス器具の作りも違います。
たとえばガスコンロなら
- 空気の取り入れ口の大きさ
- ノズルの太さ
- 使うガスホース
などが違います。
都市ガスとプロパンガスでは、熱量やガスの圧力、ガスの成分が違いますよね。
ガスを安全に便利に使うためには、ガスの種類に合わせて
- ガスを吹き出させる量
- ガスを出す圧力
- 空気との交ぜ具合
といったことも、変えなければならないのです。

はい、危険なので絶対にやらないでください。
ガスに合わないガス器具を使うと、不完全燃焼や過燃焼による事故や火災に繋がりかねません。
必ず、都市ガスには都市ガス用の、プロパンガスにはプロパンガス用のガス器具を使ってください。
関連記事:都市ガスとプロパンガスでコンロを共用できる?器具の違いを紹介
関連記事:プロパンガスと都市ガスのガスホースの違いとは?接続口や接続方法を解説
都市ガスもプロパンガスも大事なエネルギー

そう思うのも、わかります。
でも、山間部の町や離島、豪雪地帯など、いろいろな環境の土地がありますから、
都市ガスとプロパンガス両方を、場所や状況に合わせてうまく使うのが、最もリーズナブルなんですよ。
都市ガスとプロパンガスの供給方法のメリットは、
都市ガス
⇒人口の多い場所に効率的にガスを供給できる
プロパンガス
⇒ガス管を引く必要がないので、人口の少ない地域でも供給できる
ということです。
極端な話、山の中の一軒家に都市ガスを引こうとしたら、莫大なコストがかかります。
そのコストを回収できる可能性も低くなりますし、料金も高くなるでしょう。
一方、建物の多い地域で一軒一軒ガスボンベを配るのも、人件費がかかり、供給コストが高くなります。
それよりは、ガスの導管で一斉に供給したほうが、効率的で安上がりです。
ですから、都市ガスもプロパンガスも、両方あったほうが良いのです。
また、プロパンガスは災害にも強く、避難所や仮設住宅などにもすぐ設置できます。
災害の多い日本には、プロパンガスは欠かせないエネルギーなんですよ。
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まとめ
都市ガスとプロパンガスの熱量は、
都市ガス
⇒約11,000Kcal/立方メートル
プロパンガス
⇒約24,000Kcal/立方メートル
と、2倍以上の差があります。
火力については、同じ火力のガス器具であれば、都市ガスでもプロパンガスでも変わりありません。
熱量にこのような差が出るのは、成分が違うからです。
都市ガスの主成分は、メタン。
一方、プロパンガスの成分は、プロパンとブタンです。
ガスの成分が違うと、
- ガス器具の作り
- ガスの供給方法
も違います。
ですから、
安全にガスを使うためには、必ずそれぞれのガスの種類に合ったガス器具を使うことが大事です。
生活を支えてくれる、都市ガスとプロパンガス。
うまく使っていきたいものですね。