街の中で、プロパンガスのボンベをたくさん積んだトラックを見かけることがありますよね。
そうですね。
『可燃性ガス』が入っているのですから、取り扱いにも注意が必要です。
だから、プロパンガスボンベを運んだり取り扱ったりするのには資格が必要なのです。
では、どんな資格が必要なのでしょうか?
ということでこの記事では、
プロパンガスの運搬や取扱に必要な資格について解説します。
資格のない人がプロパンガスを運ぶ場合についても書いているので、ぜひ読んでくださいね!
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プロパンガスの配送に必要な資格は?
プロパンガスの配送には
- 配送に使う車に応じた運転免許
- 高圧ガス移動監視者(液化石油ガス)
- 保安作業員
- 調査員
- 充てん作業者(バルク配送をする場合)
といった資格が必要です。
では、それぞれの資格と、ガス会社ではよく使われる資格の
- 高圧ガス第2種販売主任者
- 液化石油ガス整備士
について、見ていきましょう。
なお、実際のガス会社の業務で必要な資格は、業務の内容によって違います。
この記事で挙げている資格が必要でないこともありますし、他の資格が必要になることもあります。
ここで紹介する資格は、参考として読んでくださいね。
それぞれの配送車に応じた運転免許
業務でのプロパンガスの運送には、車を使わなければなりません。
となれば当然、運転免許が必要ですね。
配送に使う車の大きさや種類に応じて、
- 普通免許
- 中型免許
- 準中型免許
- 大型免許
が必要になります。
家庭へのプロパンガス配送でよく使われているのは、2~4トントラックで、準中型や中型の免許が必要です。
メモ
平成19年までに普通免許を取った人は、
- 普通自動車
- 準中型自動車
の両方を運転することができるので、準中型免許を取り直す必要はありません。
詳細は最寄りの警察署や運転免許センターなどで確認してください。
自動車の免許は、
- 免許の種別に応じた自動車教習所で教習を受ける
- 定められた教習が終わったら、終了検定を受ける
- 車運転免許試験場で試験を受ける
という流れで取ることができます。
高圧ガス移動監視者
『高圧ガス移動監視者』の資格は、高圧ガスを安全に運搬するために監視や管理をするための資格で、
ガスの配送方法に関わらず、3,000kg以上のプロパンガスを配送する時に必要です。
この資格は『高圧ガス』に関する資格なので、プロパンガスだけではなく
- プロパンガス以外の可燃性ガスや酸素
- 質量1,000kg以上の液化毒性ガス
- 圧縮水素スタンドの貯槽に充てんする液化水素
- 容積300立方メートル以上の、圧縮の可燃性ガスや酸素
- 容積100立方メートル以上の圧縮毒性ガス
- 特殊高圧ガス
といったガスの運送にも必要です。
『高圧ガス移動監視者』の講習には
全ての高圧ガス
⇒プロパンガス以外の高圧ガスも適用される
高圧ガス(液化石油ガス)
⇒プロパンガスに適用される
の2種類があります。
『高圧ガス移動監視者』は国家資格で、取得するには講習と試験を受けなければなりません。
合格率は平均85%くらいで、国家資格の中では平均合格率が高いほうです。
なお、『高圧ガス移動監視者』は、配送車を運転する人が必ず持っていなければならないわけではありません。
運転する人が資格を持っていなくても、この資格を持った人が同乗していれば大丈夫です。
保安業務員
プロパンガスのボンベを配送する時には、ボンベ周りなどの設備点検もします。
この点検に必要な資格の1つが『保安業務員』です。
この資格は、
一般家庭などプロパンガスの供給設備や消費設備の、点検や調査業務
に必要な資格です。
『保安業務員』は国家資格ではありませんが、法律に基づいた資格です。
注意ポイント
この資格を持っている人は『点検』はできますが、『ガス設備の工事』はできません。
ガス設備の工事をするには、『液化石油ガス設備士』の資格が必要になります。
調査員
『調査員』の資格も『保安業務員』同様、
プロパンガスの供給設備と消費設備の点検、調査に必要な資格です。
メモ
『供給設備』はガスボンベやガスメーター、『消費設備』は屋内の配管や給湯器、ガスコンロなどのことです。
調査員と保安業務員では何が違うかというと、
調査員
⇒ガスメーターより下流の消費設備の点検ができる(質量販売の場合は、ボンベより下流のすべてを点検できる)
保安業務員
⇒ガスメーターより上流と下流両方の供給設備を点検できる
ということで、調査員のほうが保安業務員より点検できる範囲が狭いのです。
なお、調査員でも6か月以上の実務経験があれば、保安業務を行うことができます。
充てん作業者
バルクローリーでプロパンガスを配送する場合は、バルクタンクへの充てん作業のために『充てん作業者』の資格が必要です。
『充填作業者』の資格を取るための講習では、
- 充てんに必要な知識や技術
- バルク供給設備の知識や管理について
- 関係する法令について
を学びます。
なお、
- 製造保安責任者免状(冷凍に係るものを除く)を持っている
- プロパンガスの移動式製造設備による製造の経験が1年以上ある
この2つに該当する人は、『充てん作業者』の講習科目の一部が免除されます。
『高圧ガス第二種販売主任者』
『高圧ガス第二種販売主任者』は、『ガス会社に勤めるなら基本の資格』と言われているくらい大事な国家資格です。
この資格は
- 石油液化ガスなどの高圧ガスを販売するガス会社で保安管理に関わる業務にあたる
- プロパンガス会社や販売店の業務主任者や業務主任の代理者としての業務にあたる
というときに必要な資格です。
『高圧ガス販売主任者』には『第一種』と『第二種』があり、プロパンガスの場合は『第二種』が該当します。
『液化石油ガス設備士』
『液化石油ガス設備士』は、プロパンガス設備の工事に関わる国家資格です。
ガスの設備の工事をするには、十分な知識と技術が必要です。
可燃性のガスを安全に使えるように、設備を工事しなければならないですものね。
そのための資格が、この『液化石油ガス設備士』。
ガスの供給設備、消費設備の工事や交換などは、この資格を持っている人でないとできません。
『危険物取扱者』の資格は必要?
そういうイメージ、ありますよね。
でも、『危険物取扱者』の資格はプロパンガス配送には使えません。
プロパンガスは、消防法では『危険物』にあたらないからです。
一般の人がレンタルなどのガスボンベを運ぶときも、『危険物取扱者』の資格は要りません。
ただし、
- 灯油
- ガソリン
- プロパンガス以外の高圧ガス
などに関わる業務をする場合、業務内容によっては『危険物取扱者』の資格が必要になることがあります。
参考 一般社団法人 消防試験研究センター『危険物取扱者試験』
ガス会社の人が持っているその他の資格
ガス会社では、業務内容によっては他にもいろいろな資格が必要になります。
とあるガス会社では、国家資格だけでも
- 乙種ガス主任技術者
- 丙種ガス主任技術者
- 丙種化学液石
- 消防設備士甲種4類
- 消防設備士乙種6類
- 危険物取扱者乙種第4類
- 危険物取扱者丙種
- 給水装置工事主任
- 第2種電気工事士
- 2級施工管理技士
- 建築士(1級・2級)
- 福祉住環境コーディネーター
- インテリアコーディネーター
- 宅地建物取引主任者
など、実に様々な資格を持った人が働いています。
それは、プロパンガスが様々な場面で利用されるからです。
たとえば、床暖房の床材もインテリアの1つですよね。
床材を選ぶときにインテリアコーディネーターがいると、より良い空間が作れます。
また、福祉施設などでプロパンガスを使うこともあります。
福祉住環境コーディネーターがいれば、福祉施設の環境や機能を理解したうえで、その施設に合ったガス設備を提案することもできるでしょう。
そういったいろいろな顧客やニーズに対応するために、いろいろな資格を持つ社員がいるのです。
プロパンガスの配送に必要な資格はどうやって取る?
運転免許以外の、プロパンガスの配送に必要な資格は、
- 『高圧ガス保安協会』の講習を受ける
- 試験を受け、合格する
というステップで取得できます。
講習では、
- 法令
- ガスやガス設備などについての知識
- ガスやガス設備などを取り扱うための技術
について学び、実習もあります。
資格を取ろうかなと思ったら、高圧ガス保安協会に問い合わせてみてください。
メモ
ガス会社によっては、資格取得の手当てを出してくれることもあります。
ガス会社に就職したい場合や、就職してから資格を取る場合は、資格取得支援があるかどうかも調べてみると良いですよ。
ガス配送では『資格』以外にも大事なことがある
実際に顧客のところにプロパンガスを配送するときには、『資格を持ってさえいればOK』というわけではありません。
配送員の人達はいろいろなことに注意したり、気を遣ったりしています。
業務や点検の内容によって
- 静電気防止のため、ガス会社指定のユニフォームで作業をする
- 必ず安全靴や皮手袋を着用する
- 車両に消火設備を積載する
- 容器を交換する時には、車輪の前後に確実に車止めをする
- 車を止める時は、火気や可燃物から離れていて、交通量の少ない安全な場所を選ぶ
- 容器同士をぶつけたり、大きな音をたてたりしないようにする
- 門や階段、植木などを傷つけないようにする
などなど、安全に配送するための注意点が、たくさんあるのです。
さらに、
- お客様には、会社名とボンベ交換に来たことを伝え、あいさつする
- お客様が留守でも、『ボンベ交換に来ました』などと声をかける
など、安心してガスやガス会社を利用してもらえるように努めているとのこと。
このようにプロパンガスの配送では、『必要な資格を持っているかどうか』だけでなく、
- 1つ1つの注意事項をしっかり守って、安全に配送やボンベ交換などの作業をする
- 顧客が安心して配送員に作業を任せられるよう心配りをして対応をする
といったことも、とても大切です。
資格のない人がレンタルなどのボンベを運ぶ場合
プロパンガスボンベをレンタルしたときは、業者に使う場所まで運んでもらうのがおすすめです。
やはりプロに運んでもらった方が、安心安全だからです。
でも、少量のガスを運ぶことは、資格のない一般の人でもできます。
特別な運搬車も要らず、自家用車でも大丈夫です。
ただし、
自分で運ぶ場合でも、規則は必ず守らなければなりません。
- 一度に運ぶボンベの数と組み合わせを守る
- 運ぶ時の注意事項を守る
ということを厳守してください。
では、この2つの注意点について、さらに見ていきましょう。
自家用車で一度に運んで良いガスの量とボンベの組み合わせ
複数のボンベを自家用車で運ぶ場合、一度に運んで良い量は
- 1つのガスボンベの内容量が25L以下の容器(10kgボンベまで)であること
- 1度に運ぶガスの量が、合計50L以下(10kgボンベ2本以下)であること
ということが、経済産業省令で定められています。
具体的に言うと、自家用車などで1度に運べるのは、
- 10㎏ボンベ × 2本
- 8kgボンベ × 2本
- 8kgボンベ × 1本 + 5kgボンベ × 1本
といった組み合わせになるということです。
ただし、一度に運んで良いとするボンベの数や組み合わせは、業者によって違うことがあります。
『どのボンベを何本まで積んで良いか』は業者が安全性を考えて判断しているので、必ず業者の指示に従ってください。
そして、一度に運んで良い量よりもガスやボンベの量が多い場合は、
- 車を分けて運ぶ
- ピストン輸送する
といった方法で運びましょう。
ボンベを運ぶときの注意点
自分でガスボンベを運ぶときは
- ボンベは必ず立て、ロープなどで固定し、転倒しないようにする
- 容器の近くでは、火気厳禁
- 高温の車内に放置しない(特に夏場)
といったことに注意が必要です。
ボンベを購入したり借りたりして自分で運ぶときには、業者に注意事項をしっかり教えてもらって、厳守してください。
レンタルのときには、『自分で運んで、配送料を節約したい』と考える人もいます。
でも先にも書いたように、業者に頼んだ方が、確実に安心で安全です。
特に初めてレンタルする時は、業者に頼むことをおすすめします。
関連記事:プロパンガスボンベのレンタル料金をチェック!おすすめ業者は?
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まとめ
ガス会社の仕事でプロパンガスを運ぶときには、業務の内容によって
- 運搬に使う車に必要な運転免許
- 高圧ガス移動監視者(液化石油ガス)
- 保安作業員
- 調査員
- 充てん作業者
- 高圧ガス第2種販売主任者
- 液化石油ガス整備士
といった資格が必要になります。
ガスやガス設備を扱うには、やはり知識や技術の習得が必要なのです。
ガスボンベのレンタルなどで少量のボンベを運ぶ場合は、運転免許があればできます。
ただ、ガスの量が少ないからといって『誰でも簡単に運べる』とは思わないでください。
ガスは『取扱いに注意が必要な可燃物』です。
レンタルの場合は、できる限り業者に現地まで運んでもらいましょう。
自分で運ぶ場合も、
- 運ぶときの規則や注意点を業者にしっかり教わる
- 教わった規則や注意点をしっかり守り、1つ1つの作業を確認しながら行う
ということを厳守してください。