『プロパンガス』ってとっても便利ですよね。
でも、やはり心配なのが、事故。
プロパンガスは、多くの家庭で使われている割には、事故件数は意外と多くありません。
とはいえ、事故が起きているのも、現実。
とくにプロパンガスの場合は、ガスボンベを敷地内に置くことが多いので、
「ガスボンベが爆発したりしないかな…?」
と気になる人も多いようです。
また、ボンベの爆発だけでなく、ガス漏れや一酸化炭素中毒も、気になるところですね。
プロパンガスの事故って、どんな事故があるのでしょうか?
事故を防ぐにはどうしたら良いのでしょうか?
そこで今回は、
これまでに起きたプロパンガスの事故や、事故件数の移り変わりなど
についてお話しします。
ガスを安全に使うには、事故についてある程度知っておくことも大事です。
ぜひ読んでみてくださいね!
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プロパンガスでは、どんな事故が起きるの?

ガス事故!?
では、プロパンガスでは、どんな事故が多いのか、実際の事故の事例などを見てみましょう。
プロパンガスで多い事故は?
プロパンガスを使っている場面で起きる事故で一番多いのが、
『ガス漏れに着火した』
というタイプの事故です。
このグラフを見てみましょう。

消費に係る事故件数の推移(現象別)
引用 経済産業省 原子力安全・保安院 『ガス事故の概要(1986年~2006年)』
グラフの一番左、1986年に起こったガスの事故の中では、
『漏れたガスに火が付いた』
というタイプの事故が、
約85%
を占めています。
その後、事故防止の技術の進歩などによって、プロパンガス事故件数は、かなり減りました。
でも、『ガス漏れに着火』の事故の割合は2006年でも、約82%くらい。
つまり、割合としてはずっと『ガス漏れに着火した事故が一番多い』ということなのです。
ガス漏れをすると、ほんのちょっとした火花でも、引火してしまいます。
静電気の火花でさえも、危険です。
『たかがちょっとガスが漏れただけ』
などと、あなどってはいけませんね。
プロパンガス事故件数はどう変わった?
もう1つ、プロパンガスの事故件数についての、グラフを見てみましょう。

LPガス事故件数と安全器具普及率の推移
引用 LPガス事故件数の推移
このグラフは、
プロパンガスの事故件数と安全器具の普及率の移り変わり
を表したものです。
プロパンガスの事故件数は、2016年には、ピークの1979年の約4分の1ほどまでに減りました。
このグラフを見ると、
『プロパンガスを安全に使えるための技術・器具などの開発や普及、法整備がなされたことで、事故件数が減っていったこと』
がよくわかりますね。
ちなみに、2018年のプロパンガスの事故件数は206件。
2018年のプロパンガスの事故件数内訳
- ガス漏れ…142件
- ガス漏れによる火災…57件
- ガス漏れによる爆発…1件
- 一酸化炭素中毒・酸欠…7件
- 死亡傷者…1人(一酸化炭素中毒・酸欠での死亡者)
206件というと、かなり多いように感じるかもしれませんね。
でも、プロパンガスの使用世帯数は、約2,4000万件なので、割合としては約0.0009%。
事故率としては、かなり低いと言えます。
もちろん、だからといって油断はできません。
プロパンガスの爆発事故はそうそう起こらない
ガスの事故で気になるのが『爆発事故』でしょう。
『ガスボンベ』というと『爆発』というイメージを持つ人も多いかと思いますが、
ガスボンベに入ったプロパンガスが、何の原因もなく突然爆発することは、ありません。
ガスが爆発するのは
- ボンベの中のプロパンが酸素と結びつく(空気と混ざる)
- 火気(静電気や家電のスイッチなどの火花も含む)に接触する
という時だけです。
また、当然ですが、プロパンガスのボンベにも、ガスメーターにも、そしてガス器具にも、事故を防ぐための安全策が講じられています。
なので、爆発事故はそうめったに起こるものではありません。
ただし、
- ガスボンベが押しつぶされた
- ガスボンベが強度を超えるほどの非常に強い衝撃を受けた
というような場合には、ガスボンベが爆発することがあります。
ガスボンベの爆発については、こちらにも書いてあるので、読んでくださいね。
関連記事:プロパンガスのボンベの仕組みと圧力をチェック!爆発の可能性は?
プロパンガスの爆発事故事例
『プロパンガスの爆発事故はめったに起こらない』
と書きました。
でも、
『ガス+空気+火気=爆発する』
ということは、逆に言うと
ガスと空気が混ざった時には、ほんの少しの火花で火がついてしまう
ということでもあります。
家電製品のスイッチを入れたり、静電気の火花でさえ、ガスは着火してしまうのです。
そして、時には大事故につながってしまうことも。
実際、これまでにも大きな爆発事故が起きたことがあります。
その事例を3つ、そして、スプレー缶のガスの爆発からプロパンガス火災に至った事故を見てみましょう。
静岡県のレクリェーション施設での爆発事故
まず、1983年11月に静岡県で起こった事故です。
とあるレクリェーション施設のバーベキューハウスの室内で、大規模なガス漏れが起きてしまいました。
火を使わないようにしたのですが、製氷機の火花からガスに引火。
1,000平方メートルの鉄筋の建物が全壊するほどの、大きな爆発が起きました。
避難誘導や、ガスの元栓を閉める対応もしなかったため、死傷者まで出てしまいました。
この事故のおおもとの原因は、模様替えの工事の時に、作業員が末端のガス栓を閉め忘れてしまったことです。
工事の間は元栓が閉まっていたので、ガス漏れはしていませんでした。
でも工事が終わり、ガスを使うために元栓を開いたところ、ガス栓から大量のガスが漏れたのです。
工事のうっかりミスから、大きな事故につながってしまった例です。
プロパンガス充てん所での爆発事故
次は、ボンベの破裂を伴う事故の事例です。
1986年5月には、三重県のプロパンガス充てん所で大きな爆発事故がありました。
プロパンガスの充てん中に、ボンベにガスを詰めすぎてしまったため、ボンベを倒して弁を開き、ガスを放出しました。
そのガスに静電気の火花から着火してしまい、火災に。
作業員は弁を閉めずに避難したため、ボンベから出たガスが燃え続けました。
火が広がって、他の充てん済みボンベが熱せられてガスが噴出、着火。
そして次々にボンベが破裂して爆発炎上、という大事故になってしまったのです。
この事故では亡くなる人は出ませんでしたが、従業員2名が大やけどを負い、さらに近くの車や周辺の住宅も巻き込んでしまいました。
福岡のマンションでの爆発事故
比較的最近の事故では、2014年11月、福岡県のマンションで爆発事故が起きた例があります。
建物の壁や窓など、マンション全体が崩壊するほどの爆発。
周りの建物にもガラスが割れるなどの被害が出て、近くの保育園の園児や職員など、約80名が避難したとのこと。
それほどの大事故でしたが不幸中の幸い、亡くなる人は出ず、負傷者5名という事故でした。
この爆発事故の原因は、漏れたガスにタバコの火が引火したことと見られています。
なぜガス漏れが起き、そこでタバコを吸ってしまったのかは、不明です。
でも、プロパンガスは空気より重く、床の方に溜まります。
そのため、ガス漏れ警報器をつけていなかったりすると、気づけないこともあるかもしれません。
ガス漏れに気づかないままタバコに火をつけたら、ガスに引火してしまいますよね。
ガス漏れ警報器の設置も、大事な安全対策です。
番外編 北海道のスプレー缶からの大爆発炎上事故
最後は、2018年12月、北海道の不動産仲介業者の店舗で、スプレー缶の爆発から二次的にプロパンガス火災が起きたケースです。
この事故は最近のものですし、大きく報道されたので、覚えている人も多いでしょう。
この事故の原因は、室内で換気をせずにスプレー缶のガス抜き作業をし、その後に給湯器を点けたことです。
ガスを抜いたスプレーの数たるや、120本。
そのガスが室内に充満した状態で給湯器を点けたため、引火し、大爆発に至ってしまいました。
爆発で店舗は跡形もなく吹き飛び、周辺の建物や車の窓ガラスも割れ、周辺では停電まで起きてしまったのです。
そして、爆発によってプロパンガスの配管が外れ、ガスが流出して火災も発生。
50名以上の負傷者が出たものの、これほどの大事故でありながら亡くなる人がゼロで済んだのは、奇跡的と言えるでしょう。
この事故は二次的にプロパンガスによる火災が起きましたが、事故の大元の原因はスプレー缶のガス抜き。
スプレーとはいえ、『ガス』が入っていることには変わりありません。
プロパンガス同様、ガスを噴出した近くに火の気があれば、引火して爆発してしまうのです。
小さなスプレーでも、たった1本のスプレーであっても、
スプレーのガス抜きは、火の気のない屋外でしましょう。
プロパンガスの事故を防ぐには?
プロパンガスの事故を防ぐためには、
- 使い方や注意事項を守って正しく使う
- 保安点検を受ける
- 時々、ガス器具の手入れなどをする
- 使わない時は元栓を閉める
- 緊急対応や保安の体制が整ったガス会社を利用する
- ガス会社の緊急連絡先は、すぐにわかるところに貼っておく
ということが大切です。
どれも、プロパンガスを使う時には基本的なことですよね。
でも、この『基本的なことをしっかりやる』ことが、とても大事なのです。
逆に言うと、
『基本的なことさえしっかりやっていれば、かなりの事故は防げる』
と言えます。
そして、万が一
- ガス臭い
- 換気やバーナーの手入れをしても不完全燃焼してしまう
という時には
- ガス器具を止め、火気厳禁(換気扇などの電気器具も使わない)
- 窓や扉を開け、しっかり換気する
- すぐガス会社に連絡する
というようにして、ガス会社の人に点検をしてもらってください。
そして、安全が確認されるまでは、絶対にガスを使わないでください。
プロパンガス事故への対策

ガス会社では事故対策もしっかりやってます!
プロパンガスの事故件数は、この数十年で激減しました。
それは
- 消費機器設置工事の規制の強化
- 保安点検やガス設備についてなどの法整備
- 消費者への保安啓蒙
- 安全装置の研究や開発、普及
など、いろいろな方向から対策を講じ、実践してきたからです。
では、今現在どんな対策がされているのか、ざっと見てみましょう。
プロパンガスボンベの事故対策
まず、プロパンガスボンベについては
- ボンベの強度や素材
- 安全弁をつけるなど、ボンベそのものにつける安全装置
- ボンベの設置場所や設置条件
- ボンベの配送の仕方
などが法律で決められています。
ガスボンベは、圧力の高い、可燃性のプロパンガスを入れておくものです。
ボンベの強度や素材も、十分安全にガスを入れておけるものである必要があります。
また、外からの衝撃に強くするだけでなく、万が一、中の圧力が上がった時にも、できるだけ安全を保たなければなりません。
爆発を防ぐため、圧力が上がったらガスを放出する仕組みが付いています。
プロパンガスボンベの安全装置については、こちらに詳しく書いあります。
参考にしてみてください。
関連記事:プロパンガスのボンベの仕組みと圧力をチェック!爆発の可能性は?
いくら強度が十分で安全弁が付いていると言っても、
危ないところにはガスボンベは置けませんよね。
それに、プロパンガスボンベは家の敷地内に置くものでもあります。
そのため、置き場所や置き方にも、
- 水平で物が落ちてこない場所に置く
- ガスボンベが転倒しないように、鎖などで転倒防止策をする
- ガスボンベが40℃以上にならない場所に置く
など、ガスボンベの設置条件や管理の決まりがあります。
関連記事:プロパンガスボンベの設置基準や保管(置き場)のルールを解説!
そして、ガスボンベを安全に配送するためには、配送の仕方やボンベの扱い方なども重要です。
なので、十分な知識と技術を身につけ、資格を取る必要があるのです。
もちろん、ガスボンベの配送だけでなく、ガスを扱う時にはいろいろな資格が必要なんですよ。
関連記事:プロパンガスの取扱や運搬に必要な資格をわかりやすく解説!
ガス設備やガス器具の事故対策
ガス設備やガス器具も、
- マイコンメーターを設置する
- ガス器具に安全装置を付ける
- 定期的に保安点検をする
などの事故対策がされています。
ガスメーターには、
- 大きな地震
- 長時間のガスの使用
- 流れるガスの量が急に増えた
などという時には、
ガスメーターが自動的にガスを遮断し、事故を防ぐ装置
が付いています。
関連記事:プロパンガスのメーター表示と見方をわかりやすく解説!
また、ガスコンロや給湯器には、不完全燃焼防止装置を付けることが義務付けられています。
不完全燃焼が起きると、一酸化炭素が発生して、とても危険です。
それを自動的に防いでくれるのは、安心ですね。
他にも、空焚き防止装置や立ち消え防止装置などが付いています。
そして大事なのが、4年に1度の定期保安点検。
これはガス会社に義務付けられているもので、ガス設備や器具の点検をします。
ガス設備の不具合や故障がないか点検することで、事故につながるのを未然に防げます。
この保安点検は立合いが必要ですが、必ず受けてくださいね。
安全のための法律の整備
プロパンガスの事故を防ぐためには、法律の整備も重要です。
プロパンガスに関する法律には、
- 液化石油ガス法(液石法)
- 高圧ガス法
があります。
このうち、一般家庭でのプロパンガス使用に関わるのが、『液化石油ガス法』。
プロパンガス会社は、ガス事故を防ぐため、この『液石法』に基づいて、ガス設備やガス器具の点検などの保安業務をするように義務付けられています。
この、『法律で定める』ということがとても大切なのです。
たとえば、定期点検には、人件費がかかります。
また、ガス会社によっては、社員に資格取得手当てを出すところもあります。
もし法律で決められていない、ただの『基準』だったら、
「できるだけコストを減らしたいから、基準はお金がかからない所だけ守ればいいや。」
というガス会社も出てくるかもしれません。
それでは危ないですよね。
だから、法律で定めておけば、違反できなくなります。
法律でしっかり決めておくことが、とても大事なのです。
液石法は、1967年(昭和42年)に制定され、その後も何度も何度も改正されてきました。
改正の中には、事故防止だけでなく、販売方法などに関わるものもあります。
時代の移り変わりや消費者の意識の変化とともに、より安全に、より安心してガスを使えるように、法律も変わり続けているのです。
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まとめ
昔は、プロパンガスの事故もたくさん起きていました。
1979年には、約800件。
それが、2018年には約4分の1近くまで減っています。
ここまでプロパンガスの事故が減った背景には、
いろいろな安全対策や法整備、安全装置の技術開発や普及、そして消費者への啓もう
など、多くの人の努力がありました。
今では、プロパンガスは安心して使えるライフラインとなっています。
でもやはり、件数ゼロになるのは、なかなか難しいのが現実。
毎年、何かしらの事故が起きています。
事故が起きれば、当然被害が出ますし、場合によっては死亡事故になってしまうこともあります。
プロパンガスの事故を防ぐためには、
- 注意事項や使い方を守る
- ガス会社の保安点検を受ける
- 使わない時は元栓を閉める
- ガス器具の手入れをする
など、基本的なことを日常の中で、しっかり行うことが大切です。
プロパンガスは、安全に使えればとても便利で、地球にも優しいエネルギーです。
事故には十分気をつけながら、大いに活用していきたいものですね。